工場や倉庫の修繕工事とは、老朽化した建物を建築当初の水準まで回復させ、機能や性能を維持するための工事です。放置すると安全性や資産価値の低下につながるため、適切なタイミングでの実施が重要となります。

本記事で分かることは、以下の通りです。

① 修繕工事と改修工事の違い
② 修繕工事を行うべきタイミングと劣化症状の目安
③ 修繕工事の具体的な内容

本記事は、工場・倉庫の営繕・修繕・改修を検討している法人担当者の方に役立つ内容です。建物のメンテナンス方針を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。

修繕工事とは?改修工事との違い

修繕工事とは?改修工事との違い

工場や倉庫の劣化を放置すると、建物としての機能が低下し、生産効率の低下や従業員の皆様の安全に関わる大きなリスクにつながるおそれがあります。

しかし、実際に検討を始めると「修繕工事」と「改修工事」の違いや、最適な工事の内容、工事を行うべきタイミングなど、不明点が多く見つかるケースも少なくありません。まずは、この2つの工事の違いを整理します。

修繕工事とは

修繕工事とは、老朽化した建物を建築当初の水準まで回復させ、建物の機能や性能を維持することを目的として行う工事です。

工事内容としては、雨漏り・ひび割れの補修や、建材の破損・劣化箇所の部材交換、塗装といった、「マイナスをゼロに戻す」イメージの工事を指します。

改修工事とは

改修工事とは、老朽化した建物を原状回復するだけでなく、性能や機能を向上させたり、用途を変更したりして、建物の価値を高めることを目的として行われる工事です。

工事内容としては、屋根・外壁の高機能塗料による塗り替えや部材交換、機能改善や省エネ設備の追加といった、「マイナスもしくはゼロをプラスにする」イメージの工事を指します。

まとめると、修繕工事と改修工事では「工事の目的」と「工事内容」に違いがあります。

工場・倉庫における修繕工事の重要性

工場・倉庫における修繕工事の重要性

工場や倉庫では、生産性向上というと新たな設備投資が優先されがちで、建物の軽微な劣化や破損が見過ごされ、修繕工事が先延ばしにされるケースが多く見受けられます。

しかし、修繕工事を行うことは、安全性の向上や資産価値・企業価値の維持に寄与します。従業員の皆様の安全確保や資産価値の低下、企業イメージの低下を防ぐためにも、修繕工事は重要な取り組みといえます。

ここからは、修繕工事を行うべき理由を詳しく解説します。

安全性の向上

建材の汚損やひび割れ、破損などの劣化症状を放置すると、さまざまなトラブルの発生につながりかねません

  • 雨漏りにより床が濡れて従業員が転倒する、電子機器がショートして感電する
  • 建材のカビなどを放置したことで、アレルギーや呼吸器系の健康被害を引き起こす
  • 地震などの揺れにより、劣化が進んだ建材が落下して従業員がケガをする

このように、劣化の放置は事故につながる可能性があります。建物を当初の水準まで回復させることで、こうしたリスクを回避できます。

資産価値の維持

工場や倉庫の建物は、常にさまざまな外的要因の影響を受けて劣化や損傷が進行します。劣化や損傷を放置すると状態は悪化を続け、やがて機能的な不具合が発生します。

また、雨漏りや落下物といった外的要因により、設備が使用できなくなる、本来の機能を発揮できなくなるといったリスクもあります。その結果、工場や倉庫が本来持つ資産価値を低下させることにつながります。

修繕工事を行うことで、建物の劣化や損傷を回復させ、資産価値を本来の水準に維持することができます。

企業価値の維持

工場や倉庫の修繕工事は、企業価値の維持にも重要な役割を果たします。

劣化や損傷を放置したままでは、建物内部の清掃や整理整頓が行き届いていても、外観の低下により、取引先や地域住民など訪問者に悪いイメージを持たれかねません。「経営状況は大丈夫なのか」「製品の品質は大丈夫なのか」といったネガティブな印象を与え、口コミの低下や顧客離れにつながる可能性もあります。

適切なタイミングで修繕工事を行えば、こうした企業イメージの低下を防ぐだけでなく、従業員のモチベーション向上にもつながり、内側からも外側からも企業価値を維持することが期待できます。

修繕工事を行うべきタイミング

修繕工事を行うべきタイミング

修繕工事は「10~15年の周期」または「劣化症状が確認されたタイミング」で行うことが一般的です。

劣化の進行速度は建物の立地や環境によって大きく異なります。特に24時間体制で稼働している工場や倉庫は、高温や湿度変動、油分、振動などの要素が複合的に作用するため、建材や設備への負荷が高く、一般的な戸建住宅などと比べて早い段階で劣化が進む傾向があります。

このように、修繕工事を行うべき周期(メンテナンス周期)は、建物を取り巻くさまざまな要因によって変動します。ここでは、修繕工事を行うべき劣化症状とメンテナンス周期の「目安」をご紹介します。

部位別の劣化症状の目安

建材の劣化症状は部位や種類によって異なります。以下の症状が広範囲、または多数見られる場合は、専門家による診断をおすすめします。

●屋根の劣化症状

屋根材の種類劣化症状
波型スレート
・苔藻の発生・色褪せ 
・反り・割れ・フックボルトの錆 等
金属折板・色褪せ・チョーキング・塗膜剥離
・錆・孔食・ボルトの錆 等

●外壁の劣化症状

外壁材の種類劣化症状
波型スレート・苔藻の発生・色褪せ
・反り・割れ・フックボルトの錆 等
ALC・色褪せ・チョーキング・塗膜剥離 
・割れ・欠損・凍害・シーリング材のひび割れ 等
金属サイディング・色褪せ・チョーキング・塗膜剥離 
・錆・孔食 等
窯業系サイディング・色褪せ・チョーキング・塗膜剥離 
・反り・割れ・欠損・凍害・シーリング材のひび割れ 等

●内装の劣化症状

内装材の種類劣化症状
天井材(石こうボード等)・汚染・雨染み・割れ・欠損 等
床材(長尺シート等)・汚染・摩耗・めくれ 等

●構造体の劣化症状

構造体の種類劣化症状
鉄骨・汚染・錆・孔食 等
基礎巾木・汚染・ひび割れ・欠損 等

●設備

設備の種類劣化症状
照明・電気設備・汚染・動作不良・故障 等
配管・汚染・錆・孔食・水漏れ・破損 
・汚染・詰まり・チョーキング・変形や破損 等

メンテナンス周期は様々な要因で変動する

一般的にメンテナンス周期の目安として、屋根・外壁では約10~15年ごとの工事が推奨されています。ただし、これはあくまで目安であり、実際の適切なタイミングは、立地環境や使用状況、建物の構造や使用している建材の種類など、さまざまな要因によって変動します。

適切な時期に修繕工事を行うことで、建物の耐久性を建築当初の水準に維持でき、前章で述べた「安全性・企業価値・資産価値の維持」につなげることが可能です。そのためには、工場や倉庫に使用されている建材の劣化度を正確に把握し、計画的にメンテナンスを実施することが重要です。

修繕工事の内容

修繕工事の内容

修繕工事は外壁や屋根等の外装部分にとどまらず、構造体や屋外設備等もその対象になります。

修繕項目工事内容
屋根工事・部分補修・屋上防水・屋根塗装・カバー工事・屋根材の葺き替え 等
外壁工事・部分補修・シーリング材の打ち替え・外壁塗装・カバー工事・外壁材の張り替え 等
内装工事・部分補修、内装/床塗装、内装材/床材の張り替え 等
構造補修工事・部分補修・鉄骨防錆処理・基礎巾木の塗装 等
設備工事・配管や樋の交換、電気設備の点検/修理/交換 等

このような修繕工事は、建物のグレードアップを目的として費用と時間を大きくかける改修工事とは異なり、部位や場所ごとに区分けし、小規模かつ計画的に行われることが一般的です。倉庫や工場では生産活動を止めない工事の実施が求められることが多く、修繕工事は建物の維持と生産活動の維持を両立させることを前提に行われています。

また、これらの工事は建築当初の水準に回復させることを目的とするため、建築時と同等の機能を発揮する建材や工法を用いて行われることが一般的です。

定期点検の重要性

定期点検の重要性

ここまで、修繕工事を行うタイミングの目安となる劣化症状やメンテナンス周期、その工事内容について解説しました。しかし、所有されている工場や倉庫の状態を営繕担当者の方のみで確認しても、「修繕工事を行うべき状態なのか」の判断は非常に難しいものです。

「判断はつかないけれど、大丈夫だろう」とメンテナンスを怠ると、従業員のけがや事故、生産ラインの一時停止といった運用上のリスクを引き起こす可能性が高くなります

そのため、気になる症状がある場合や、1~3年程度のスパンで専門業者による点検を行うことが重要です。定期点検を行うことで、劣化症状の見落としを防ぎ、早期対応によるトラブルの未然防止が可能になります。

まとめ

今回は、工場や倉庫における修繕工事についてご紹介しました。

修繕工事は適切な時期に行うことで、建物の耐久性を建築当初の水準に維持でき、長期的なコスト削減や安全性の向上につなげることが可能です。そのためには、工場や倉庫に使用されている建材がどの程度劣化しているかを正確に把握することが重要ですが、修繕工事を行うべきかの判断は担当者ひとりでは難しいものです。

普段から定期的なメンテナンスを実施していただくこと、気になる症状があった場合は専門業者に相談していただくことが重要です。

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