工場の暑さ対策としてスポットクーラー(スポットエアコン)を入れたいけれど、自社で効果はあるのか、配置台数はどれくらい必要かで悩んでいませんか。スポットクーラーは、暑い工場内で即効性のある冷却機器として便利です。一方で、台数や配置、ドレンの処理など、適切に行わなければ思ったほど効果が出ません。

本記事では、スポットクーラーの運用を成功させるためのコツからWBGTの基礎まで、わかりやすく紹介します。さらに、工場の遮熱と組み合わせると、必要台数の削減や効果の安定化を狙える理由も解説しています。スポットクーラーの導入を検討している方は、参考にしてみてください。

工場におけるスポットクーラーの役割

はじめに、スポットクーラーは工場全体を冷やす機械ではありません。作業をしている人の体感温度をピンポイントで下げるための、部分的な冷房です。全館空調が難しい工場で、熱中症のリスク低下や作業効率の向上を図るために、導入されます。

本章では、なぜスポットクーラーが必要なのかを、工場が有する環境リスクの面から解説します。

工場の暑熱環境が引き起こす3つの深刻な問題

熱のこもりやすい工場での作業は、作業員に大きな負担をかけます。暑熱環境下での作業は、安全面のリスク・生産性の低下・品質への悪影響の3つの問題を引き起こします。

①熱中症のリスク
なかでも、意識すべきなのは安全面のリスク。工場内は、風通しの悪さや熱源の多さから、熱中症を起こしやすいのが特徴です。WBGT(暑さ指数)が高い環境では、こまめな休憩や冷却が必要になります。

厚生労働省の資料※によると、WBGTが28℃以上または気温31℃以上の環境で一定時間以上行われる作業は、現場で適切な対応が求められています。

※厚生労働省:職場における熱中症対策の強化について

②集中力の低下による生産性ダウン
また、体感温度が上昇すると、集中力が低下して生産性が落ちるのも問題です。暑い場所で動き続けると、いつも以上に疲労が溜まるため、判断力や動作スピードが遅くなります。結果として生産性が落ち、成果が出せません。

③ミスや検査の見落としの発生
集中力の低下にともない、ミスや検査の見落としも増加します。熱で製品に影響を及ぼす可能性もあり、品質面でのデメリットも見逃せない要素です。

全館空調が難しい工場の実態

工場の熱中症対策としてスポットエアコンと同じく検討される選択肢に、全館空調があります。効率よく全体を冷やせる便利な設備ですが、空間が広く開口部の多い工場では、全体を冷やそうとすると能力が大きく高コストな設備が必要です。さらに、発熱機器が多いと思うように冷えない場合もあります。

また、換気扇や大型扇風機だけでは外気自体が暑い日の場合、風が動くだけで温度が下がりません。結果として、体感温度はあまり変わらず、WBGTも下がりにくい状況が起こります。

全館空調の導入が難しい工場において、有効となる設備がスポットクーラーです。必要な人や工程にだけ冷風を当てることで、コストも抑えつつ効率よく熱中症対策が行えます。

スポットクーラーの基本的役割

スポットクーラーは、特定の作業エリアや作業者に圧縮式冷凍サイクルで冷却した空気を冷送り、局所的に温度と体感を下げる冷房機器です。キャスター付きで移動できるタイプも多く、工場のレイアウト変更に対応しやすいのが特徴です。

同時に、排熱が発生するので、熱を屋内に溜めないためにはダクトを使い屋外へ排出する必要があります。

大がかりな工事が必要ないため現場へ導入しやすく、全館空調に比べてコストも安くすみます。

スポットクーラーはスポットエアコンと呼ばれる場合もありますが、呼び方の違いだけで機能は同じです。

スポットクーラーで期待できる効果

スポットクーラーは、局所的に気流を当てて体感を下げるのが得意な冷房機器です。暑い場所でも集中して冷風を送れるため冷却効果が高く、WBGTを低減できる効果が期待できます。

そのため、台数と配置が適切で、排熱やドレン対策まで含めて設計できれば、作業者周辺の暑さ対策が可能です。

スポットクーラーのメリット・デメリット

スポットクーラーは、局所的に素早く冷却効果を発揮できるという強みがある一方で、排熱やドレン処理、電源の確保などが問題です。
メリット・デメリットどちらも把握することで、効率的な運用を行えます。

スポットクーラーの主なメリット

即効性と導入スピード

大がかりな工事が少なく、スムーズに導入できるのがメリット。移動式なら置くだけでよく、届いたその日のうちに使用が可能です。そのため、夏直前でも対応しやすく現場の状況を見てから判断ができます。

レンタルなら数日〜1週間で稼働できるため、まず1〜2台で効果検証し、効果があれば台数の追加や配置変更で最適化できるのも魅力です。

局所的な高い冷却効果

スポットクーラーは、作業者に直接冷風を当てられます。効率よく体感温度を下げられるので局所的な冷却効果が高く、快適な作業をしやすいのが利点です。加えて、機器ごとに風量を調整できるので、作業場所に合わせて対応ができます。

人だけでなく検査工程や発熱機器周辺など、熱に弱い機材へのピンポイントな冷却も可能です。

移動・配置変更の柔軟性

移動が簡単にできるため、季節や工場のレイアウト変更に合わせて対応しやすいのもポイント。ほかの冷房設備が故障した際のサポートとしても便利です。必要な時期と場所にだけ集中して運用が行えます。

まずは試験的に導入してみて、効果があれば本格的に展開をする、といった流れで運用も可能です。

初期投資の抑制(レンタル活用時)

スポットクーラーのレンタルを活用すると、購入したときより初期費用を大きく抑えられます。たとえば、繁忙期や猛暑期のみの運用や、メインの冷房機器が故障したときなど、柔軟に対応できるのが強みです。

スポットクーラーの購入を考えている場合の、お試し用としても活用できるので、機種選定の失敗リスクを減らせます。

スポットクーラーのデメリットと対処法

排熱処理の必須性

スポットクーラーは冷風の発生と同時に排熱もする冷房機器です。排熱を室内に放置すると工場全体が暑くなり、スポットクーラーの効果を感じにくくなります。

対処法は、排熱ダクトを設置して屋外や上方へ排気する、換気扇と併用して排熱の流れを作るなどです。また、屋外設置型の検討もしてみてください。

ドレン水(結露水)の処理

冷却の過程で発生するドレン水を処理しなければならないのも、デメリットです。適切な処理を怠るとカビが発生して、健康面に影響が出る可能性があるため注意。水漏れをして床が濡れると、スリップや電気系統への悪影響などのリスクが高まります。

トラブルを回避するためにも、現場の条件に応じて蒸発式・タンク式・配管排水式を選定してみてください。加えて、床の養生や受け皿の設置、周辺への警告などを行いリスクを低減させます。

電源容量と電気代

冷却能力の高いスポットクーラーほど、消費電力が増える傾向にあるのが特徴。とくに、2〜5kWクラスの高出力機に関しては専用の回路が必要です。出力の増加にともない、電気代が上がる点にも注意しなければなりません。

さらに、複数起動時は、電源容量が足りないとブレーカーが落ちるリスクもあります。導入前には電源系統を確認し、必要なら専用回路を検討してみてください。また、時間差起動ルールを作ると、ブレーカー落ちのリスクを減らせるのでおすすめです。

騒音(運転音)

スポットクーラーは運転音が大きく、50〜70dBに達するものもあります。騒音は現場で作業する際のストレスになるだけでなく、静音性を求められる検査工程や会話が必要な工程では不向きです。

騒音が気になる場所に導入する場合は、静音仕様モデルの選定、遮音板の活用、作業者との距離確保などで対応してみてください。

粉塵・油ミスト環境でのメンテナンス負荷

粉塵や油ミストの多い環境下では、フィルタの目詰まりにも気をつかわなければなりません。フィルタが詰まると、風量の低下や冷却能力の劣化を引き起こします。

スポットクーラーの能力を維持するためには、週1〜2回程度のメンテナンスやメンテ専任者の配置などが必要です。予防策として、前置フィルタの追加も役立ちます。

全館冷房ではない(局所対応の限界)

スポットクーラーは局所的な冷却が得意なので、工場全体を均一に冷やす用途としては向いていません。運用する場合は、人がいる場所や時間に絞って配置して、台数と配置を最適化する必要があります。

工場全体の暑さ対策をする場合は、遮熱や全館空調などの恒久策との併用も検討してみてください。

メリット・デメリットの総括表

項目メリットデメリット対処のポイント
即効性◎ 数日で稼働可能レンタル活用で更に短縮
冷却効果◎ 局所で体感大幅改善△ 全館は冷えない配置設計で最大化
柔軟性◎ 移動・増減が容易季節・ライン変更に対応
排熱× 処理必須屋外排気ダクト必須
ドレン△ 滴下リスク配管or受け皿で対処
電源△ 容量・工事必要事前調査と系統分け
騒音△ 50〜65dB配置と機種選定
メンテ△ 粉塵で頻繁清掃計画化と前置フィルタ

スポットクーラーは「局所・即効・柔軟」という工場向けの強力なメリットを持つ一方、排熱・ドレン・電源・騒音といったデメリットは設計段階で潰し込めます。次章以降で、これらを踏まえた具体的な選定と配置設計の手順を解説します。

スポットクーラーの選び方

スポットクーラーを選ぶ際には、現場の状況に適したモデル選びが大事です。タイプは大きく分けて移動式スポットクーラー、ダクト延長型、屋外設置・ダクト送風型の3種類があります。

選ぶ際の基準として大切なのが「対象を冷やせる風量・静圧・温度」、「排熱を外へ逃がせるダクト」、「フィルタ・騒音の環境対策」の3点です。また、設置するにあたって電源も確認しておきましょう。

※静圧(せいあつ):ダクトや曲がりがあっても風を押し出す力。静圧が弱いと、ダクトを伸ばした途端に風量が落ちます。

移動式スポットクーラー(キャスター付)

底面にキャスターが付いたタイプのスポットクーラーで、簡単に移動を行えるのが特徴です。配置を変えやすく、必要なときにすぐ使えます。たとえば、作業工程によって作業員の位置が変わる場所や、レイアウトの変更がある工場との相性が良好です。

一方で、冷風と同時に発生する排熱の逃がし方が重要です。室外へ向けて排熱ダクトを設置するための、コストや手間がかかります。

ダクト延長型(高静圧)

障害物がある場所や長距離へ冷風を送りたいときに活躍するのが、ダクト延長型のスポットクーラーです。静圧が高いモデルならダクトを使って遠くまで冷風送っても風量が落ちにくく、現場の広い工場で活躍します。

注意点としては、電源容量が大きくなりやすく、騒音も上がる傾向があるため、設置場所の選定や運用ルールの確認が重要です。

屋外設置・ダクト送風型

排熱を屋内に持ち込まないので、工場内の温度上昇を抑えやすいのが魅力です。屋外の設置スペース確保やダクト経路の事前確認などが必要ですが、冷却性能が優れており効果的に身体を冷やせます。

スポットクーラーの導入はまずはレンタルがおすすめ

これから工場にスポットクーラーの導入を検討している場合、まずレンタルから試してみるのがおすすめです。

スポットクーラーのレンタルをおすすめする理由 

スポットクーラーを工場に導入する場合、複数台を購入する必要があり、高額な初期費用がかかります。しかも、効果的な台数・機器の性能・ランニングコストなどがわからない状態なので、失敗するリスクが高いのも問題です。

一方で、レンタルでの導入から始めると、初期費用を抑えつつ効果の検証を行えるのがメリット。実際に必要な台数や配置を見極められるだけでなく、スポットエアコンの性能も確認できます。

とくに、暑い作業環境下で働いている場合、暑さ指数であるWBGTを導入前後で比較しやすい点にも注目。作業環境の改善が見られた場合は購入して、本格的な運用を行うと費用対効果も高められます。

作業環境の改善・作業効率の上昇・品質の向上など、稟議で刺さる材料がそろうのもポイントです。

助成金の活用にも事前レンタルはオススメ

助成金の活用を検討する場合も、レンタル検証で必要台数と効果を整理しておくと、申請や社内説明がしやすくなります。

たとえば、厚生労働省が取り組んでいるエイジフレンドリー補助金は、安全衛生対策の費用を支援する制度の一つです。

レンタルと購入を使い分ける判断軸

レンタルは、必要なときだけ導入できるので、短期的な運用に向いているのが特徴です。たとえば、スポットクーラーの効果を検証するための試験導入や、猛暑期の早急な熱中症対策などがあります。

試験導入の場合は、必要台数や配置の把握、急な熱中症対策は素早く設置できるのがメリットです。

毎年使用する予定がありレンタルで効果の検証ができた場合は、購入の方がおすすめです。レンタルを先にしておくことで、必要な初期費用やランニングコストが明確化され、効率的な運用ができます。

レンタルをする際は、WBGT計を活用したりさまざまな配置を試したりすると、より費用対効果を高められるので検討してみてください

スポットクーラーと遮熱塗装の併用

スポットクーラーは、ピンポイントに効率よく冷風を送れる便利な機器です。しかし、外気温が35℃を超えるような酷暑では工場内の熱が上がり、スポットクーラーでの対応が難しくなります。

効果の底上げや安定化を図るためには、工場の遮熱・日差し対策と併用するのがおすすめです。工場全体の熱負荷が低減することで、必要なスポットクーラーの台数削減や運転負荷の低下が期待できます。結果的に導入コストと電気代が減り、費用の削減も可能です。

アステックペイントでは、工場・倉庫の暑さ対策として、遮熱塗装の有効性や温度低下の事例を紹介しています。

まとめ

工場の暑さ対策として、スポットクーラーは即効性があり有効です。しかし、工場の環境や外気温によっては効果が落ちる場合があります。

スポットクーラーを導入した際に効果を感じられない場合は、来季に向けた熱中症対策として屋根や外壁の遮熱塗装を検討してみてください。 アステックペイントでは、豊富な実績と品質の高さで暑さ対策に自信があります。無料で相談や現地調査も行っているので、まずはお気軽にご相談ください。

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