夏場の折板屋根直下での急激な室温上昇は、作業効率を著しく低下させるだけでなく、熱中症という重大な労務リスクを招きます。

一方で冬季には、外気との温度差による結露が発生し、精密機械や製品への滴下によるサビ・品質不良の要因となります。

さらに、昨今の電気料金高騰は、空調費にも影響を与えています。こうした背景から「断熱対策」を検討する企業が増えていますが、担当者が最も頭を悩ませるのは「遮熱と断熱の違いは何か」「どの工法が最も投資回収効率が良いのか」という点ではないでしょうか。

本記事では、工場改修の実務に携わる施工管理技士の視点から、工場の断熱対策の種類とそれぞれの効果、そして稟議資料をまとめる際に欠かせない判断基準を詳しく解説します。

工場・倉庫における「断熱」とは?

ハテナを浮かべる作業員

熱対策を検討する際、まず混同されがちなのが「断熱」と「遮熱」です。この違いを正しく理解することが、工場の課題解決にも繋がります。

「断熱」:熱の伝達を遮る

断熱とは、素材そのものが熱を伝えにくい性質を利用し、内外の熱移動を抑えることを指します。

夏のメリット: 外気の熱が屋内に伝わるのを防ぎ、冷房効率を高めます。
冬のメリット: 室内の暖まった空気が外へ逃げるのを防ぎます。

つまり、「1年を通して空調効率を上げ、結露対策も行いたい」そんな場合には、断熱が効果的な選択肢となります。

「遮熱」:日射熱の侵入を跳ね返す

遮熱は、太陽光(赤外線)を反射することで、建物の表面温度が上がるのを防ぐ技術です。

夏場は屋根の表面温度上昇を劇的に抑え、放射熱による「じりじりとした暑さ」を軽減しますが、冬場の暖房効率向上には寄与しません

主に「夏場の熱中症対策を最優先し、コストを抑えたい」という場合に適しています

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目的による使い分けの基準

施工管理の現場では、以下の基準で工法を整理します。

対策の目的優先すべき工法理由
夏場の暑さ対策を最優先遮熱(遮熱塗装・遮熱シートなど)初期コストを抑えつつ、夏季の即効性が高いため。
冬の結露・年間光熱費の抑制断熱(断熱材・カバー工法等)熱の出入りを双方向でブロックし、冬の保温にも効くため。

夏場・冬場の室内温度や、結露などに悩まされている場合は、断熱を軸にした対策を検討するのがおすすめです。

断熱対策の効果とメリット

断熱対策の効果

工場の断熱対策は、単なる「建屋の修繕」ではありません。労働安全、品質管理、そしてエネルギーコストという経営の根幹に関わる指標を改善するための戦略的な投資です。

現場において、断熱対策が経営にどのような効果をもたらすのか、その具体的なメリットを整理します。

労務リスクの低減と人的資本の保護

製造現場における生産性は、作業員の健康状態に直結します。

労働安全衛生指標の改善
夏季、折板屋根の温度が60度を超える過酷な環境では、WBGT値(暑さ指数)が容易に警戒レベルに達します。
断熱対策は、「熱中症」という重大な労務リスクを回避し、安全配慮義務を果たす上での非常に重要な対策と言えます。

定着率と集中力の維持
快適な労働環境の整備は、従業員の満足度向上に寄与し、採用率の向上や離職率の低下などにもつながる可能性があります。

2. 結露の抑制によって設備・製品保護

断熱によって結露を抑制することができれば、精密機械の基板故障や、出荷待ち製品のサビによる「不適合品(不良品)」の発生を抑制することができます。結果的に工場の歩留まり率向上に貢献します。

3. エネルギーコストの最適化と設定温度の適正化

電気料金が高騰する昨今、空調効率の改善はエネルギー消費原単位の低減に欠かせません。

断熱性が低い建物は空調設備の効きが悪く、設定温度の調整や熱による機器への負担により、多くのコストが発生する場合があります。

断熱を施すことで、夏季は熱の侵入を防ぎ、冬季は暖まった空気を保持するため、空調の効率が良くなり、月間の電力使用量の削減に寄与します。

第3章:工場・倉庫の断熱性を高める主な工法5選

主な断熱の工法

工場の熱対策において「正解」は一つではありません。建屋の築年数、予算、そして「施工中にラインを止められるか」などの現場の制約によって、最適な工法は異なります。ここでは断熱対策でよく採用される5つの手法について、比較・解説します。

断熱塗装(屋根・外壁)

屋根や壁の表面に断熱塗料を施工する方法です。

  • 特徴:塗膜の中に微細な中空セラミック等を含み、熱の伝達を抑制します。
  • 実務上のメリット:既存の定期メンテナンス(塗り替え)のタイミングに合わせられるため、追加の足場代などがかからず、コストを抑えて導入が可能です。
  • 操業への影響:屋外作業がメインとなるため、工場内部の生産ラインを止める必要がほとんどありません。

断熱材の設置(天井・壁)

グラスウールや発泡プラスチック系の断熱材を建物の内側に設置する方法です。

  • 特徴:非常に高い断熱性能を持ち、外気の影響を物理的にシャットアウトします。
  • 実務上のメリット:冬場の保温効果が極めて高く、結露対策においても効果を発揮します。
  • 操業への影響:屋内作業となるため、高所作業車や足場の設置により、ラインの一部封鎖や動線変更が必要になるケースがあります。簡易的な手法として、天井裏に「断熱シート」を貼る低コストな選択肢もあります。

断熱窓(複層ガラス・内窓)の採用

窓からの熱流出入を抑えるために、複層ガラスへの交換や内窓(二重窓)を設置する方法です。

  • 特徴:窓辺の冷気(コールドドラフト)や夏季の直射日光による室温上昇を抑えます。
  • 実務上のメリット:事務スペースが併設された工場や、精密な温湿度管理が求められるクリーンルーム付近の熱対策に非常に有効です。
  • 操業への影響:窓周辺の作業スペースの一時的な片付け程度で済み、大規模な操業停止は不要です。

断熱カーテン・間仕切りシート

出入口や特定の作業エリアを断熱性の高いカーテンで仕切る方法です。

  • 特徴:必要な空間だけを区分けして、効率よく冷暖房することができます。
  • 実務上のメリット導入コストが極めて安く、即効性があります。 大型のシャッターを頻繁に開閉する搬入口などの熱逃げ防止に最適です。
  • 操業への影響:設置工事は短時間で完了し、日常のオペレーションにもすぐに組み込めます。

カバー工法(屋根)

既存の屋根の上に新しい屋根を被せ、その間に空気層や断熱材を設ける工法です。

  • 特徴:屋根が二重になるため、高い断熱・遮音性能を得られます。
  • 実務上のメリット:断熱と同時に「雨漏り対策」も完結し、建物の寿命を20〜30年単位で延ばすことができます。
  • 操業への影響:屋根の上での作業が中心ですが、既存屋根の劣化状況によっては安全確保のために屋内の一部立ち入り制限が必要になる場合があります。

工場の断熱対策に関するよくある質問(Q&A)

Q&A

Q1. 「断熱」と「遮熱」はどちらを優先すべきですか?

A. 解決したい「課題」の優先順位によって決まります。

夏季の熱中症対策を最優先し、即効性と低コストを求めるなら「遮熱」が有効です。一方で、冬季の結露対策や年間を通じた空調費の削減、精密機械の保護までを見据える場合は、熱の出入りを双方向でブロックする「断熱」が有効です。

断熱効果はどのくらいの期間持続しますか?

A. 工法によりますが、適切なメンテナンスを前提に「建物の寿命に近い長期」にわたって維持されます。

  • 断熱塗装:耐用年数は約10〜15年ですが、塗料の種類によって前後します。メーカーが提示する「期待耐用年数」を参考にするとよいでしょう。塗膜が劣化すると機能が低下するため、耐用年数が経過するより前に塗り替えを推奨します。
  • 断熱材・断熱窓:建物内部に設置されるため、物理的な断熱性能は長期的に維持されるのが特徴です。ただし、結露や雨漏りによる湿気で断熱材が含水したり、サッシの気密材が傷んだりすると急速に劣化が進みます。定期的な点検が寿命を左右します。
  • カバー工法:屋根材そのものの耐久性に依存しますが、およそ15年程度~が一般的です。ボルトの緩みやコーキングの劣化を適切に管理することで、長期間効果を持続させることが可能です。

費用面の負担を抑える「補助金」などはありますか?

A.省エネや脱炭素(カーボンニュートラル)に資する工事は、国や自治体の補助金対象となるケースが多くあります。

断熱改修は空調の電力消費量を直接的に減らすため、「省エネ設備投資」としての枠組みで申請できる可能性があります。また、投資回収期間(ROI)のシミュレーションにおいて、電気代削減額を算出することも重要です。

アステックペイントでは、こうした制度の活用やコストメリットの算出についても、サポートが可能です。

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まとめ

工場の断熱対策は、単なる「環境改善」に留まらず、人的資本の保護、製品品質の維持、そして経営コストの最適化を同時に実現する、インフラ投資です。
「まだ検討段階だから」と先送りにせず、まずは専門家による建屋診断を受け、現状の熱損失を可視化することから始めてみてください。

アステックペイントでは、断熱塗装・遮熱塗装を初めとして、各種工場のお悩みにお応えする各種工法をご提案しております。ぜひお気軽にご相談ください。

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