工場・倉庫で熱中症が起きやすい最大の理由は、夏場に屋根からの熱が室内に入り込むことです。2025年の職場における熱中症の死傷者は1,803人と統計開始以来最多を記録し、業種別では製造業が365人で最も多くなっています(厚生労働省調べ)。

遮熱塗装は、屋根が太陽光の熱を吸収するのを抑え、この熱侵入を元から減らす熱中症対策です。空調のように室内の空気を冷やすのではなく、熱の入り口である屋根で対処するため、空調が行き届きにくい広い工場・倉庫でも効果を得やすいのが特長です。

この記事では、遮熱塗装が熱中症対策に有効な理由を、国の統計・塗料の性能基準・実際の測定データをもとに解説します。

工場・倉庫で熱中症が起きやすい3つの理由

理由① 薄い屋根材が熱を室内に伝える

工場・倉庫に多い折板屋根や波形スレート屋根などの金属屋根は、夏場の直射日光で表面温度が70℃以上に達することがあります。屋根材の厚みは折板で0.6〜1.2mm、波形スレートで約6mmと薄く、吸収した熱が短時間で室内に伝わります。

屋根からの熱侵入が、工場・倉庫の高温環境を生む最大の要因です。

理由② 広い空間で空調が行き届かない

天井が高く床面積の広い工場・倉庫では、空調の冷気が作業エリア全体に届きにくく、屋根から入った熱が上部にこもります。空調を強めても屋根からの熱が入り続けるため、室温が下がりにくい構造です。

理由③ 設備からの発熱と長時間の身体作業

稼働中の生産設備や炉が室温をさらに押し上げます。そこに長時間の立ち作業や重量物の運搬が重なることで、作業者の体温上昇と疲労が蓄積し、熱中症リスクが高まります。

データで見る職場の熱中症

建物構造の問題に加え、作業環境そのものも熱中症リスクを高めます。

  • 長時間の身体作業により、体温上昇と疲労が蓄積する
  • 熱を発生させる機械が多く稼働していると、室内温度がさらに上昇する

総務省の調査によると、令和7年5月〜9月の熱中症による救急搬送者数の累計は100,000人以上にのぼり、工場・作業所などの仕事場では10,559人と、10.5%を占めています。

さらに、厚生労働省の報道資料によると、令和7年の職場における熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1,803人であり、全体の約3.7割が建設業と製造業で発生しています。

(参考:総務省 熱中症による救急搬送状況(令和7年) 厚生労働省 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(令和7年))

2025年6月から熱中症対策が事業者の義務に

2025年6月の改正労働安全衛生規則の施行により、WBGT28℃以上または気温31℃以上の環境で「連続1時間以上」または「1日4時間超」の作業が見込まれる場合、事業者には熱中症の早期発見のための体制整備、重症化を防ぐ手順の作成、関係者への周知が義務付けられました。

義務の中心は報告体制と対応手順ですが、作業環境の温度そのものを下げることは、対象となる危険な状況を減らす根本的な対策になります。

遮熱塗装が熱中症対策に有効な理由

工場の外観

近赤外線を反射して屋根の温度上昇を抑える

太陽光は波長によって3つに分けられ、建材を熱くする主な原因は近赤外線です。

種類波長建物への影響
紫外線100〜400nm建材・塗膜を劣化させる
可視光線400〜780nm人の目に見える光
近赤外線780〜2,500nm建材が熱を持つ原因

遮熱塗料に含まれる「遮熱顔料」は、この近赤外線を効率よく反射します。屋根が熱を吸収しにくくなるため、室内への熱侵入が減り、作業空間の温度上昇を抑えられます。

中空ビーズで熱の伝わりを抑える

空気層を持つセラミック(中空ビーズ)を配合した遮熱塗料もあります。塗膜の中に空気の層ができて熱が伝わりにくくなるうえ、セラミック自体も太陽光を反射します。

空調効率が上がり電気代も下がる

屋根からの熱侵入が減ると、既存の空調が効きやすくなります。設定温度を上げたり稼働時間を短くしたりできるため電気代の削減につながり、空調設備への負荷が減ることで機器の長寿命化も期待できます。塗膜が雨水や紫外線から屋根材を守るため、雨漏りや劣化の予防にも役立ちます。

効果が出る遮熱塗料の見分け方

屋根用遮熱塗料の産業企画 JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)

「遮熱塗料」と名乗る製品は多くありますが、性能には差があります。見極めの目安になるのが、屋根用遮熱塗料の日本産業規格「JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)」です。

この規格では、塗膜に光を当てて近赤外線をどれだけ反射するか(近赤外域日射反射率)を測定し、基準を満たすかを判定します。カタログや仕様書で「JIS K 5675適合」の記載があるかを確認すると、一定の遮熱性能が担保されているかを判断できます。

外壁用遮熱塗料には規格がない点に注意

JIS K 5675の対象は屋根用塗料のみで、外壁用遮熱塗料には現時点でJIS規格がありません。基準がないため、メーカーの独自判断で「遮熱塗料」と表記できるのが実情です。外壁にも遮熱塗装を検討する場合は、メーカーに試験方法と性能データを確認しましょう。

アステックペイントでは外壁用塗料についても、屋根用のJIS規格と同じ評価方法で基準に合格したものだけを遮熱塗料と定義しています。

遮熱塗装による温度低下効果【施工事例3件】

地域屋根比較方法結果
茨城県折板屋根施工前後の比較屋根表面温度20.1℃低下/天井裏温度8.0℃低下
島根県折板屋根塗装面と未塗装面の同時比較屋根表面温度16.3℃低下/天井裏温度2.0℃低下
大阪府折板屋根施工前年と施工後の同月比較熱中症危険日(WBGT31℃以上)8日→0日

① 茨城県・折板屋根工場:屋根表面温度が20.1℃低下

茨城県の折板屋根工場

測定期間:2018年6月25日〜7月13日(塗装工事は7月3日〜6日)
測定箇所:屋根表面温度、天井裏温度(天井から2m下)
使用塗料:超低汚染リファイン500Si-IR

外気温約34℃の環境で60℃以上に達していた屋根表面温度が、施工後に20.1℃下がりました。天井裏温度も8.0℃低下しており、屋根の温度を下げることが作業空間の温度低下に直結することを示しています。

②島根県・折板屋根工場:屋内温度が2℃低下

島根県の折板屋根工場

測定日:2018年8月23日
測定箇所:屋根表面温度、天井裏温度(屋根から1m下・外壁から30cm)
使用塗料:超低汚染リファイン500Si-IR

折板屋根の半分だけを塗装し、塗装面と未塗装面を同じ日・同じ条件で測定したテスト施工です。気象条件の違いが入らないため、遮熱塗装そのものの効果を客観的に確認できます。

結果として、外気温約34℃以上の環境で、未塗装面と塗装面の屋根表面温度16.3℃、室内温度2.0℃の差が測定されました。

上記2件の詳細は、遮熱性・遮熱保持性データ資料集にてご確認いただけます。

工場屋根の遮熱効果データ資料のダウンロードページリンク

③大阪府・折板屋根工場:熱中症危険日が8日から0日に

比較期間:遮熱塗装前の2018年8月と、遮熱塗装後の2019年8月
測定指標:WBGT(暑さ指数)

WBGTは気温・湿度・日射や輻射熱をもとに算出する指標で、28℃以上で「厳重警戒」、31℃以上で「危険」とされています(環境省)。
施工前は8日あった危険日が、施工後は0日になりました。年ごとの気象の違いも影響しますが、改正労働安全衛生規則の基準にも使われるWBGTで改善を確認できた事例です。

他の熱中症対策との比較

対策主なメリット主なデメリット耐用年数の目安
遮熱塗装屋根からの熱侵入を元から抑える。屋根材の劣化防止にもなる効果が出るまで施工期間が必要7〜15年以上(樹脂により異なる)
遮熱シート施工性が高く工期が短い屋根材の劣化は防げない。海沿いでは錆が出ることがある約10年
空調設備短時間で任意の温度まで下げられる電気代がかさむ。高温環境で故障しやすい―

屋根表面が50〜60℃を超える工場・倉庫では、空調と遮熱塗装を組み合わせることで、空調の電気代とメンテナンス費を抑えながら熱中症対策を続けられます。

遮熱塗料を選ぶ4つのポイント

① 耐用年数(樹脂の種類)

樹脂の種類耐用年数の目安特徴
ウレタン塗料5〜7年安価だが耐久性が低い。屋根・外壁より樋などの付帯部で使われる
シリコン塗料7〜10年価格と性能のバランスが良い。12年以上の耐候性を持つ製品もある
フッ素塗料15年〜高価だが耐久性に優れ、次回塗装までの期間を延ばせる
無機塗料15年〜フッ素よりさらに高価な傾向。耐久性に優れ、不燃性がある

② 遮熱効果が長持ちするか(低汚染性)

遮熱塗料は、塗膜の表面に付いた汚れが熱を吸収することで、年数とともに効果が落ちていきます。長く効果を保つには、汚れが付きにくく雨で流れ落ちる「低汚染性」を持つ塗料を選ぶことが重要です。初期の性能だけでなく、経年後の「遮熱保持性」のデータも確認しましょう。

建物の状態や周辺環境に応じて、ひび割れに追従する防水機能や防サビ機能も検討するとよいでしょう。

③JIS K 5675への適合と色の明るさ

前述のとおり、屋根用の遮熱塗料であればJIS K 5675に適合しているかどうかが性能の目安になります。また、同じ製品でも明るい色ほど遮熱効果が高いため、色選びとセットで検討しましょう。

④ 工場・倉庫の実績がある施工業者

塗装は、施工業者によって品質が異なるケースがあります。信頼できる塗装業者を選ぶポイントとして、以下の4つが挙げられます。

・工場・倉庫の遮熱塗装の実績が豊富か
・現地調査をしたうえで提案しているか
・暑さの悩みや操業への影響を踏まえた提案になっているか
・質問に丁寧に答えてくれるか

まとめ

本記事のポイントを以下にまとめました。

・工場・倉庫で熱中症が起きやすい最大の理由は、薄い屋根材からの熱侵入
・遮熱塗装は近赤外線を反射し、屋根温度を下げることで作業空間の温度上昇を抑える
・塗料はJIS K 5675適合・明るい色・低汚染性の3点で選ぶと効果が長続きする

アステックペイント遮熱塗料メーカーシェアNo.1※の塗料メーカーとして、実際の遮熱効果をご自身の工場で確かめられる「遮熱テスト施工」を無料で承っています。施工前後の温度差をグラフ化し、他社塗料と比較することも可能です。

熱中症対策として遮熱塗装をご検討の方は、まずはテスト施工で効果をご確認ください。

※ペイント&コーティングジャーナル第3555号「屋根用・遮熱塗料特集」より

現場調査・お見積りも無料にて承っております。
工場・倉庫の暑さ対策についてお困りごとがありましたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ!