「波形スレート(波型スレート)」は、耐久性や耐火・耐熱性に優れるため、工場・倉庫の屋根材や外壁材として使用されることの多い外装材です。
しかし、この波形スレートは経年劣化に伴い、わずかな力でも壊れることがあるため、メンテナンス時には注意が必要です。

工事業者へ修繕・改修工事を依頼する際にも、波形スレートの劣化状況に応じた工法、安全対策を講じる業者を選ぶ必要があります。

今回は、そんな波形スレートについて、その特徴やメンテナンス時に潜む危険性、そして適切な安全対策について詳しく解説していきます。

※以下、「波形スレート」と表記します。

波形スレートとは?

波形スレート

波形スレートとは、セメントと繊維を主成分として作られる波状の外装材です。
耐火性や耐熱性に優れており、主に工場や倉庫などの非居住建造物に屋根・外壁材として使用されています。

波形スレートは耐久性が30~40年程度と言われていますが、経年劣化によりひび割れや破損が発生します。
そのため、経過年数や劣化状況に応じたメンテナンスが不可欠となります。

経年劣化した波形スレートの危険性

波形スレート屋根からの墜落死亡事故件数

耐久性が高い波形スレートですが、時間の経過とともに劣化が進行すると、わずかな力で破損するほど強度が低下します。
そのため、塗り替え時や点検・調査時に踏み抜いてしまう危険性があります。

実際に、平成18年から平成27年の10年間で発生したスレート屋根からの転落死亡事故は145件にのぼり、そのうち9割以上が「踏み抜き」によるものです。

■スレート屋根からの墜落死亡災害の発生件数(原因別)

参照元:波形スレート屋根工事における墜落災害の防止(一般社団法人 全国建設業労災互助会、独立行政法人 労働者健康安全機構・労働安全衛生総合研究所)

経年劣化した波形スレート屋根の強度試験

劣化した波形スレート屋根の危険性を調査するため、実際に経年劣化(約30年程度経過)した波形スレート屋根を用いて、その強度を測る試験を行いました。

■試験方法
波形スレート屋根の試験体を固定し、中央に一線の荷重を加え、試験体が破壊した時の荷重(重さ)を測定。

■試験結果

・経年劣化(30年程度経過)した波形スレートの強度:182kg
・新品波形スレートの強度:400kg以上

この試験により、30年ほど経過した波形スレート屋根は、新品のものと比較して強度が半分以下に低下していることが確認できました。

今回の試験では6点で試験体を支えているため、1点あたりが耐えられる荷重は約30kgに過ぎません。(182kg÷6点=約30kg)

実際に波形スレート屋根の上を調査や塗装工事のために歩行する場合、踏み込み等により、30kgを超える荷重がかかる場合も想定されます。

以上のことから経年劣化による波形スレート屋根の強度低下が、踏み抜き事故の原因となっていることが分かります。

波形スレート屋根の踏み抜き事故事例

実際に発生した波形スレート屋根の踏み抜き事故の事例をご紹介します。

先述のとおり、経年により劣化した波形スレート屋根は人が乗れるほどの強度がありません。
しかし、事故の多くは、波形スレート屋根の危険性を軽視していることが原因で発生しています。

【事例①】スレート屋根の一部が抜け、落下した男性が死亡・命綱なし

19日午前10時20分ごろ、横須賀市内川1丁目の横浜鋼材の工場で、補修作業中に屋根の一部分が抜け、同市長浦町の建設業の男性(46)が落下した。
男性は全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
浦賀署が事故原因を調べているが、傾斜があるスレート屋根の一部分(約90センチ四方)が抜け、男性が約12メートルの高さから床部分の鉄板に落下したという。命綱は付けていなかった。
落下した破片などが工場内にいた横浜鋼材の社員の男性(33)に当たり、軽傷を負った。

※引用元:2020年2月20日 神奈川新聞

【事例②】スレート屋根を踏み抜き、墜落

工作所 屋根改修工事において、鉄骨平屋の工場のスレート屋根の上で、雨漏り箇所の修繕のためにスレート屋根上全面に波形鉄板の敷き込み作業を行っている際、スレート屋根を踏み抜き、高さ約5mの高さから墜落し、死亡した。
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

①スレート屋根上の作業にあたり、踏み抜き防止措置等の安全措置を講じていなかったこと。
②ヘルメット(保護帽)を着用していなかったこと。

引用元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害事例

事故が起きた場合のさまざまなリスク

改修工事中に屋根の踏み抜き事故が発生すれば、現場作業者の生死に関わる問題となります。
その他、「工場の生産ラインが止まる」「工期が伸びる」などの影響が出て、通常の工場運営に支障が生じるだけでなく、現場作業者の安全確保による精神的負担の軽減策を講じるなど、様々なリスクが考えられます。

そうならないためにも、波形スレートの改修工事・メンテナンスを行う際には、安全対策を取れる業者を選定することが非常に重要になります。

波形スレート屋根の改修工事における安全対策

安全帯

波形スレートの改修工事を行う場合、経過年数や劣化状況に合わせ工法を選定することになります。
どのような工法を選ぶにせよ、踏み抜き事故を防ぐための共通の対策として、以下の3つの安全対策は必ず実施する必要があります。

業者選定の際には、現場調査や見積等の段階で、これらの安全対策をしっかりと行えるかどうか確認してください。

踏み抜き事故防止のための3つの安全対策

① 幅30cm以上の歩み板を設置する。
② 落下防止用ネットを設置する。
③ 親綱の設置と墜落制止用器具(安全帯)を使用する。

これらの安全対策は、労働安全衛生規則によって定められています。

【労働安全衛生規則】第524条(スレート屋根等の屋根上の危険の防止)
事業者は、スレート屋根、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅が30 センチメートル以上の歩み板を設け、防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

【労働安全衛生規則】第518条(作業床の設置等)
① 事業者は、高さが2メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。

② 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等、墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

※引用元:厚生労働省 安全衛生情報センター 労働安全衛生規則より

波形スレート屋根の改修工事・メンテナンス方法とは?

では、波形スレートの改修工事・メンテナンスはどのように行えばよいのでしょうか?
ここでは、経過年数や劣化状況に合わせた2つの方法をご紹介します。

状態別の改修工事・メンテナンス方法

① 経過年数が短く、ひび割れ・破損が少ない場合:塗り替え工事を推奨

建材の経過年数が短く、劣化が少ない場合は、塗り替え工事による改修・メンテナンスが有効です。
定期的な塗り替え工事は、波形スレートの劣化を抑制し、寿命を延ばす効果があります。

ただし、アスベスト含有建材の場合は、別途アスベスト飛散対策が必要となります。

▼アスベスト飛散対策についてはこちら(アステックペイント運営メディア)
アスベストの飛散防止対策が必要な工事現場を詳しく解説 | AP ONLINE

② 30年程度経過している、ひび割れや破損が多数発生している場合:
カバー工事、または葺き替え工事を推奨

カバー工事の様子

劣化が進行している波形スレートは非常に脆いため、塗り替え工事だけでは強度の回復は見込めません。
そのため、屋根の不具合を根本的に解消できる「カバー工事」または、アスベスト含有建材でも改修可能な「葺き替え工事」を推奨します。

■カバー工事
既存の屋根材の上から、その上に新しい屋根材を葺く工事のこと。
解体作業が不要なため、アスベストを含有していても安全に改修工事が可能です。
また、屋根を解体しないため、工期中の工場の稼働を停止する必要がありません。

■葺き替え工事:
すでに葺かれている屋根材を撤去して、下地の交換・補修を行い、屋根全体をリフォームする工事のこと。

まとめ

今回は、波形スレートの概要、耐久性、メンテナンス時に潜む危険性、そして状態別に推奨される改修・メンテナンス方法について解説しました。

工事費用や工期だけでなく、安全対策をしっかりと行える業者を選定することで、事故のリスクを低減させることができます。
ぜひ参考にされてください。

最後に

アステックペイントでは、工場・倉庫のスレート屋根改修工事を承っております。
全国の工場・倉庫改修工事を得意とする有料認定施工店とのネットワークを活かして、安全対策に十分に配慮した高品質な塗装工事をご提供可能です。
まずは小さな工事やご相談からでも、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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