「波型スレート」は優れた耐久性やコストパフォーマンスから多くの工場施設の屋根・外壁で採用されています。
波形スレート屋根で雨漏りが発生した際に、専門業者に依頼すると費用がかかる、日数がかかるなどの理由から、軽度の雨漏りであれば、DIYで応急処置を行いたいとお考えになる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、波形スレート屋根の雨漏りをDIYの応急処置で対処するのはお勧めできません。
ご自身で屋根に上がることはとても危険です。絶対に行わないでください。
本記事では、その理由と、専門業者にメンテナンスを依頼する重要性について解説します。
目次
波形スレートとは?
波形スレートとは、セメントと繊維を主成分として作られる波状の建材のことです。
特徴的な波状の形をしているのは、たわみや曲げの応力に対する剛性を高めるためです。
波形スレートには、波の幅が大きい「大波スレート」と、小さい「小波スレート」があります。
工場や倉庫などの非居住建造物では、大波スレートは屋根に、小波スレートは外壁で多く使用されています。
耐火性や耐熱性が高く、比較的軽い屋根材のため地震の際に建物に負担がかかりにくいといったメリットがあります。
一方、経年劣化によるひび割れや、雨水などの水分による浮きや反りが雨漏りの原因となるといったデメリットがあります。
波形スレート屋根の耐用年数
波形スレートの耐用年数は、20~30年と言われています。
波形スレートは、劣化の原因となる雨水などの水分を吸い込みやすいため、劣化の進行を遅らせるために、塗装などによって表面を保護することが必要です。
表面の仕上げや改修時に使用する塗装コーティングにもよりますが、屋根を長期的に維持するためには一般的10年前後の周期で塗り替えを行うことが推奨されています。
波形スレートの雨漏り発生原因

波形スレート屋根で雨漏りが起きる主な原因は以下の通りです。
経年による耐久性の低下
波形スレートは、年数が経つごとに吸水しやすくなり、吸水と乾燥が繰り返されることで強度が低下します。
20~30年を経過すると、微細なひび割れや苔藻が目立つようになります。
この状態の波形スレートは非常に脆くなっており、衝撃や荷重など小さな刺激でも破損する危険性があります。
ひび割れ
屋根や外壁の波形スレート表面には、温度・湿度変化や建物の挙動により細かなひび割れが発生します。
微細なひび割れでも雨水の浸入経路となり、放置すると徐々にひび割れが拡大します。
また、ひび割れから浸入した水分が基材内部を劣化させることで、雨漏りのリスクが一気に高まります。
フックボルトの劣化

波形スレート屋根は「フックボルト」と呼ばれる部材で固定されていますが、そのフックボルトの劣化も雨漏りの大きな原因です。
金属製のフックボルトは、年月とともにサビや緩みが生じ、取り付け部分から雨漏りが発生する場合があります。
開口部の隙間
工場の屋根には、排気ダクトや明かり取りを設置するために開口部となっている場所があります。
新築時の開口部は、隙間から雨が入らないように板金やシーリング材などで雨仕舞されています。
しかし、温度変化による建材の動きや、建物の振動、経年劣化によって、徐々に開口部に隙間が開き、雨漏りが発生する場合があります。
雨樋の詰まり
屋根には、屋根材を伝った雨水を集めて安全に地面まで流すために、雨樋が設置されています。
屋根には落ち葉や砂埃などのゴミが積もり、一部は雨樋に溜まります。溜まったゴミによって雨樋が詰まってしまうと、雨水が雨樋に滞留し溢れることで、建材の隙間や経年劣化によるひび割れから雨水が浸入し、雨漏りが発生する場合があります。
波形スレート屋根の応急処置をDIYで行ってはいけない理由
雨漏りが発生してしまった場合、まずは社内で「とりあえず応急処置をできないか?」と考えたくなりますが、波形スレート屋根の応急処置をDIYで行うことは厳禁です。
専門業者による改修が入るまで、水濡れに弱い設備や在庫はブルーシートなどで被ったり、水に濡れない場所に移動させたりして、屋根に上らずにできる対策のみを行いましょう。
波形スレート屋根は強度低下により「墜落事故」が起きるリスク
DIYによる応急処置を行ってはならない理由は「作業上の危険性が高く、作業者の安全確保が非常に困難」であるためです。
長年使用された波形スレートは非常に脆く、人が片足で踏み込む程度のわずかな力で割れてしまうことがあります。
工場や倉庫の波形スレート屋根の補修は高所作業となり、屋根を歩行した際、脆くなった波形スレートを踏み抜き「墜落」する危険性があります。
実際に、一般社団法人 全国建設業労災互助会の報告によると、平成18年以降の10年間で、波形スレート屋根工事における死亡災害は145件で、うち踏み抜き事故は137件にのぼります。

参照元:波形スレート屋根工事における墜落災害の防止(一般社団法人 全国建設業労災互助会、独立行政法人 労働者健康安全機構・労働安全衛生総合研究所)
墜落事故を防ぐための法令・規則も定められており、工事業者はこれらを守り安全対策を徹底しています。
工事の経験がない人が、波形スレート屋根上で作業を行うことは高いリスクが伴うため、絶対に行ってはいけません。
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波形スレート屋根のメンテナンスについて
波形スレートの劣化による雨漏りは、専門業者による修繕工事を行うことで回復が見込めます。
主なメンテナンス方法は以下の3つです。
1.塗装工事
2.カバー工事
3.葺き替え工事
それぞれの工事の特徴をお伝えします。
経過年数が短く劣化が少ない場合:塗装工事

既存の波形スレート屋根に塗料を塗布して防水性・美観を取り戻す方法です。
耐用年数は波形スレートの状態や、塗料のグレードによって様々で、7~25年ほどです。
工事にかかるコストが比較的安く、また使用する塗料の種類によって、遮熱性や低汚染性などの効果を付与できます。
ただし、劣化の著しい波形スレートでは、塗装による改修ができない場合もありますので、専門業者にご相談ください。
劣化が進行している場合①:カバー工事

既存の波形スレート屋根の上に、新しい屋根材を重ねて葺く方法です。
既存屋根の撤去作業がほぼ不要で、塗装工事と異なり塗り重ねや乾燥時間などを考慮しなくて良いため、他の工方と比較して工期が短くなります。
近年はガルバリウム鋼板のカバー屋根材が使用されることが多く、耐用年数はおおよそ20~30年ほどです。
次の葺き替え工事と比較して廃材削減が可能といったメリットがあります。
また屋根が二重となるために、断熱性や防音性が向上する効果もあります。
ただし、カバー工事は屋根の重みが増すため、耐震性が低下する恐れがあり、建物の耐荷重によってはカバー工事ができない場合があります。
劣化が進行している場合②:葺き替え工事
既存の波形スレート屋根を撤去し、新しい屋根材に交換します。
耐用年数は屋根材そのものの年数となり、新たに波型スレートで葺き替える場合は、20~30年となります。
屋根材を一新するため防水性能を取り戻すことができますが、既存屋根を撤去する分、コストは上がり、工期は長くなります。
さらに、工場の稼働を停止する必要があるため、部分的な葺き替え工事を除き、採用されることは少ない傾向にあります。
【注意】2004年以前設置の波形スレート屋根はアスベスト対策が必要
2004年以前に設置された波形スレートの場合、波形スレートにアスベスト(石綿)が含まれる可能性が高いため、工事を行う際はアスベスト対策が必要となります。
アスベスト対策について気を付けるべきポイントについては以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
まとめ
波形スレート屋根からの雨漏りを見つけた際に、ご自身で屋根に上がることはとても危険です。絶対に行わないでください。まずは、地上から安全にできる範囲で、大切な設備や在庫が雨水で濡れないように対策をして、その後すぐに専門の業者に連絡しましょう。
専門業者に相談する際は、適切な調査・工事を行う業者を選定することが大切です。
アステックペイントでは、工場の屋根施工の実績豊富な施工店が改修工事を行うため安心です。
波形スレート屋根の改修をご検討中の方は、ぜひサイト下部の「お問合せフォーム」よりご連絡ください。
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