工場や倉庫に多く採用されている波形スレート屋根は、耐久性とコストパフォーマンスに優れています。しかし、築年数が経過した建物では、アスベスト含有の可能性があり、撤去や改修に多額の費用がかかることがあります。

そこで視野に入るのが、既存の屋根材の上から新しい屋根材を重ねる「カバー工法」です。本記事では、カバー工法のメリット・デメリット、適した工場の条件、費用や補助金の考え方まで、わかりやすく解説します。

波形スレート屋根の「カバー工法」とは

波形スレートとは、セメントを繊維で補強し、波形に成形した屋根材です。耐久性とコストパフォーマンスに優れていますが、2000年代以前に製造されたものには、アスベストが使用されているケースが多く、メンテナンスや撤去には専門的業者による撤去と、廃棄物処理費用が必要になります。

そこで、広く採用されているのが「カバー工法」と呼ばれる手法です。これは、既存の波形スレート屋根の上に、新しい屋根材を直接施工する工法で、既存屋根の撤去が不要なため、コストを抑えたメンテナンスが可能です。

ただし、屋根全体の重量が増すため耐震性に影響が出る可能性があること、次回のメンテナンス時には「カバー材+既存材」の両方を撤去する必要があり、より高額になる可能性があることなど、留意すべき点もあります。自社に最適な施工方法を選ぶには、メリット・デメリットを十分に理解することが重要です。

カバー工法のメリット・デメリットと適した工場

カバー工法のメリット

カバー工法メリットは大きく3つです。

①アスベスト飛散のリスクが少ない
1990年代から2004年にかけて製造されたスレート屋根には、アスベストが含まれている場合があります。アスベストの撤去には特別な処理が必要で、費用がかさむだけでなく、施工業者によっては適切な処理が行われず、健康被害のリスクが残ることもあります。カバー工法であれば、アスベストを封じ込めたまま施工できるため、飛散リスクがなく、安全かつ経済的に工事を進められます。

②屋根の機能性向上
カバー工法では、既存屋根と新しい屋根材の間に断熱材や防水シートを使用することで、断熱性、防音性、防水性の向上が期待できます。既存屋根との間に断熱材を施工することで夏場の暑さ対策や冬場の寒さ対策を行うこともできます。

③施工時でも工場の稼働を止める必要がない
カバー工法は屋根を撤去しないため、工場の生産ラインを止めることなく施工できます。操業を継続しながらメンテナンスが可能な点は、大きなメリットといえます。

カバー工法のデメリット

カバー工法のデメリットは大きく3つです。

①既存屋根の修繕はできない
カバー工法は既存の波形スレートをそのまま残すため、下地の修繕や改修は行いません。劣化が著しい屋根にカバー工法を施すと、下地の不具合が表面化する可能性があります。そのため、既存屋根の劣化状況によっては、カバー工法が適用できない場合があります。

②次回のメンテナンス時にはより大きく撤去費用が掛かる
1回目のメンテナンスでカバー工法を選択した場合、2回目のメンテナンス時には「既存屋根の撤去費用+カバー材の撤去費用」が必要となり、1回目よりも費用が高額になる可能性があります。

③増築や部分補修が困難になる
上から屋根を被せるため、下地のスレートが部分的に破損したり、雨漏りが発生したりしても、部分補修ができません。補修する場合は、カバー材を一度撤去する必要があります。また、屋根材を動かせなくなるため、増築も困難になります。

カバー工法の施工費用・耐用年数・適した工場

カバー工法の一般的な施工費用と期待耐用年数は、以下のとおりです。

施工費用10,000円/㎡〜
期待耐用年数約15年

※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。

カバー工法が特に適しているのは、以下のような工場です。

こんな工場におすすめ:
・築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
・屋根の耐久性、断熱性、防音性を向上させたい
・生産ラインを止めずに施工したい

カバー工法以外のメンテナンス方法

屋根のメンテナンス方法はカバー工法だけではありません。
主な3つの方法と、それぞれに適した工場のタイプをご紹介します。

葺き替え工法

施工費用12,000〜20,000円/㎡
期待耐用年数約15年〜

※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。

葺き替え工法は、既存の屋根材を完全に撤去し、新しい屋根材に交換する方法です。特に工場では、劣化した部分だけを交換する「部分葺き替え」が一般的です。

新しい屋根材を施工するため、屋根全体の耐久性と防水性を根本から回復できる点、カバー工法よりも屋根荷重が軽い点が魅力です。ただし、アスベスト処理費用がかかるほか、工事期間中は建物の使用ができないことから、選択のハードルは高くなります。

こんな工場におすすめ:
・築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
・屋根を根本から修繕し、建物を長期にわたって使用したい

・スレート屋根からガルバリウム鋼板など、より性能の高い屋根材に変更したい

発泡ウレタン工法

施工費用10,000円/㎡〜
期待耐用年数約15年〜

※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。

波形スレート屋根に発泡ウレタンを吹き付けることで、優れた耐久性と断熱性を実現する工法です。屋根材の補強と密着により、長期間の耐久性を確保できます。

また、高い断熱効果により室内の温度調節が容易になり、エネルギーコストの削減にも貢献します。既存の屋根をそのまま活用するため、産業廃棄物を最小限に抑えられ、新しい屋根材も不要なため、コスト削減にもつながります。

こんな工場におすすめ:
・築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
・荷重をかけずに、屋根の耐久性を向上させたい

・遮熱・断熱効果も同時に付与したい
・アスベストの飛散を防止したい
・生産ラインを止めずに施工したい

塗装工法

施工費用2,000〜5,000円/㎡
期待耐用年数約13〜15年以上

塗装は単に色を付けるだけでなく、紫外線や雨などの自然環境から屋根材を保護する効果があります。また、熱を反射して夏場の省エネに貢献する遮熱性を付与することも可能です。既存の屋根材を補修・修繕するメンテナンス方法のため、撤去費用がかからず、最も安価なのが特徴です。

こんな工場におすすめ:
・できる限り安価に補修を行いたい
・築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい

・荷重をかけずに雨漏り対策をしたい
・生産ラインを止めずに施工したい
・アスベストの飛散を防止したい
・暑さ対策も同時に行いたい(遮熱機能を持つ塗料を使用の場合)

各施工法の比較一覧

各施工法の期待耐用年数、施工費用、適した工場のタイプを一覧表にまとめました。工場の状態や予算に応じて、最適な施工法をお選びください。

工法期待耐用年数施工費用こんな工場におすすめ
葺き替え工法約15年~12,000~20,000円/㎡・築年数が10年以上経過しており、保全をセットで行いたい
・根本的に屋根を修繕し、建物を長期に使用したい
発泡ウレタン工法約15年~10,000円/㎡~・築年数が10年以上経過しており、保全をセットで行いたい
・荷重をかけず、屋根の耐久性を向上させたい
・遮熱・断熱効果も付与したい
アスベストの飛散を防止したい
カバー工法約15年10,000円/㎡~・築年数が10年以上経過しており、保全をセットで行いたい
・屋根の耐久性を向上させたい
塗装工法約13~15年以上2,000~5,000円/㎡・築年数が10年以上経過しており、保全をセットで行いたい
・荷重をかけずに雨漏り対策したい
暑さ対策も同時にしたい
・アスベストの飛散を防止したい

※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。
※塗装工法の施工費用はアステックペイント塗料使用の場合

詳しくは関連資料をご覧ください。

アスベストを含有する波形スレートの修繕・改修の注意点

1990年代から2004年までに製造されたスレート屋根には、アスベストが含まれている可能性があります。通常時はアスベストが飛散することはなく安全ですが、修繕や改修工事を行う際には十分な注意が必要です。専門知識を持つ業者に依頼し、適切な処理を行うことが重要です。

適切なメンテナンスを行うには

各施工法の特徴や費用、適した工場のタイプをご紹介してきましたが、自社に最適なメンテナンスを実現するには、信頼できる施工業者としっかりと話し合うことが不可欠です。また、施工業者によって、価格だけでなく、対応できる工事の種類や施工の丁寧さなど、品質に差が出ることもあります。

アステックペイントは全国3,500社の施工店とネットワークを持つ塗料メーカー。お客様からのヒアリング内容に応じて、工場専門の認定塗装店120社から厳選した施工会社をご紹介いたします。また、忙しい業務の合間を縫って改修工事を進めなくてはならないご担当者様のご負担は少しでも少なくなるよう、専門スタッフが全力でサポートいたします。

まとめ

本記事では、スレート屋根におけるカバー工法のメリット・デメリット、その他の工法の特徴、そして最適な施工法の選び方をご紹介しました。

自社の状況に合わせて適切なメンテナンスを行うことは、従業員の快適性、工場の外観、建物全体の寿命、すべてに関わる重要な判断です。工場の屋根にご不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせ