工場や倉庫に多く使われる波形スレート屋根は、耐久性とコストパフォーマンスに優れた屋根材です。 しかし、築年数が経過した建物では、アスベストを含む可能性があり、撤去・改修には高額な費用がかかるケースも少なくありません。
そこで注目されているのが「カバー工法」です。 既存の屋根材を撤去せず、上から新しい屋根材を重ねるこの工法は、稼働を止めずに施工できる点が特長です。
この記事でわかること
- カバー工法の仕組みとメリット・デメリット
- 施工費用・期待耐用年数の目安
- 葺き替え・発泡ウレタン・塗装との工法比較
- アスベスト含有スレートの改修時の注意点
- 自社に合った工法の選び方
この記事が役立つ方
- 工場・倉庫の屋根改修を検討している法人担当者の方
- アスベスト含有スレートへの対応方法を確認したい方
- 生産ラインを止めずに屋根工事を行いたい方
目次
波形スレート屋根の「カバー工法」とは

波形スレートの特徴とアスベスト問題
波形スレートとは、セメントを繊維で補強し、波形に成形した屋根材です。 耐久性とコストパフォーマンスに優れており、工場や倉庫をはじめとする産業施設で広く採用されています。
一方で、1930年代から2004年にかけて製造されたスレート屋根には、アスベストが含まれている場合があります。 アスベストの撤去には専門業者による適切な処理が必要で、廃棄物処理費用も含めると、改修費用が大きくなるケースがあります。
カバー工法の仕組み
カバー工法とは、既存の波形スレート屋根を撤去せず、その上に新しい屋根材を直接施工する工法です。 既存屋根の撤去が不要なため、アスベストを封じ込めたまま施工を進められます。
ただし、留意すべき点もあります。 屋根全体の重量が増すため、耐震性に影響が出る可能性があります。 また、次回のメンテナンス時には「カバー材+既存材」の両方を撤去する必要があり、より高額な費用がかかる可能性があります。
自社に最適な工法を選ぶには、メリット・デメリットを十分に理解したうえで判断することが重要です。
カバー工法のメリット

カバー工法メリットは大きく3つです。
アスベスト飛散リスクを抑えられる
1990年代から2004年にかけて製造されたスレート屋根には、アスベストが含まれている場合があります。 アスベストの撤去には特別な処理が必要で、費用がかさむだけでなく、施工業者によっては適切な処理が行われず、健康被害のリスクが残ることもあります。
カバー工法であれば、アスベストを封じ込めたまま施工できます。 飛散リスクを抑えながら、安全に工事を進められる点は大きなメリットです。
屋根の機能性を向上できる
カバー工法では、既存屋根と新しい屋根材の間に断熱材や防水シートを使用することで、断熱性・防音性・防水性の向上が期待できます。 断熱材を施工することで、夏場の暑さ対策や冬場の寒さ対策にも効果を発揮します。
工場を稼働させたまま施工できる
カバー工法は屋根を撤去しないため、工場の生産ラインを止めることなく施工できます。 操業を継続しながらメンテナンスを進められる点は、稼働率を重視する工場にとって大きなメリットといえます。
カバー工法のデメリット・注意点

カバー工法のデメリットは、大きく3つです。 施工前に十分に確認しておきましょう。
既存屋根の下地修繕はできない
カバー工法は、既存の波形スレートをそのまま残すため、下地の修繕・改修は行いません。劣化が著しい屋根にカバー工法を施すと、下地の不具合が表面化する可能性があります。
既存屋根の劣化状況によっては、カバー工法が適用できない場合もあります。 事前に専門業者による現地調査を行い、施工可否を確認することが重要です。
次回メンテナンス時の撤去費用が増加する
1回目のメンテナンスでカバー工法を選択した場合、2回目のメンテナンス時には「既存屋根の撤去費用+カバー材の撤去費用」が必要となります。
1回目よりも費用が高額になる可能性がある点は、長期的な維持管理コストとして念頭に置いておきましょう。
増築・部分補修が困難になる
上から屋根を重ねる構造上、下地のスレートが部分的に破損したり、雨漏りが発生したりしても、部分補修ができません。
補修が必要な場合は、カバー材を一度撤去する必要があります。
また、屋根材を固定してしまうため、増築も困難になります。
将来的な建物の拡張や変更を検討している場合は、あらかじめ施工業者と相談しておくことをおすすめします。
カバー工法の施工費用と期待耐用年数
カバー工法の一般的な施工費用と期待耐用年数は、以下のとおりです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 施工費用 | 10,000円/㎡〜 |
| 期待耐用年数 | 約15年 |
※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。
カバー工法が特に適しているのは、以下のような工場です。
こんな工場におすすめ
- 築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
- 屋根の耐久性・断熱性・防音性を向上させたい
- 生産ラインを止めずに施工したい
カバー工法以外の屋根メンテナンス工法

屋根のメンテナンス方法は、カバー工法だけではありません。
ここでは、主な3つの工法と、それぞれに適した工場のタイプをご紹介します。
葺き替え工法
葺き替え工法は、既存の屋根材を完全に撤去し、新しい屋根材に交換する方法です。 特に工場では、劣化した部分だけを交換する「部分葺き替え」が一般的です。
新しい屋根材を施工するため、屋根全体の耐久性と防水性を根本から回復できます。 また、カバー工法よりも屋根荷重が軽い点も特長です。
一方で、アスベスト処理費用がかかるほか、工事期間中は建物の使用ができない点には注意が必要です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 施工費用 | 12,000〜20,000円/㎡ |
| 期待耐用年数 | 約15年〜 |
※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。
こんな工場におすすめ
- 築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
- 屋根を根本から修繕し、建物を長期にわたって使用したい
- スレート屋根からガルバリウム鋼板など、より性能の高い屋根材に変更したい
発泡ウレタン工法
発泡ウレタン工法は、波形スレート屋根に発泡ウレタンを吹き付けることで、優れた耐久性と断熱性を実現する工法です。 屋根材への補強と密着により、長期間の耐久性を確保できます。
高い断熱効果により室内の温度調節が容易になり、エネルギーコストの削減にも貢献します。 既存の屋根をそのまま活用するため産業廃棄物を最小限に抑えられ、新しい屋根材も不要なためコスト削減にもつながります。
| 綱目 | 目安 |
|---|---|
| 施工費用 | 10,000円/㎡〜 |
| 期待耐用年数 | 約15年〜 |
※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。
こんな工場におすすめ
- 築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
- 荷重をかけずに、屋根の耐久性を向上させたい
- 遮熱・断熱効果も同時に付与したい
- アスベストの飛散を防止したい
- 生産ラインを止めずに施工したい
塗装工法
塗装工法は、既存の屋根材を補修・修繕するメンテナンス方法です。 撤去費用がかからず、4つの工法の中で最も安価な点が特長です。
塗装は単に色を付けるだけでなく、紫外線や雨などから屋根材を保護する効果があります。 また、熱を反射して夏場の省エネに貢献する遮熱性を付与することも可能です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 施工費用 | 2,000〜5,000円/㎡ |
| 期待耐用年数 | 約13〜15年以上 |
※アステックペイント塗料使用の場合
こんな工場におすすめ
- できる限り安価に補修を行いたい
- 築10年以上が経過し、保全工事とセットでメンテナンスを行いたい
- 荷重をかけずに雨漏り対策をしたい
- 生産ラインを止めずに施工したい
- アスベストの飛散を防止したい
- 暑さ対策も同時に行いたい(遮熱機能を持つ塗料を使用の場合)
各工法の比較一覧
各工法の期待耐用年数・施工費用・適した工場のタイプを一覧にまとめました。
工場の状態や予算に応じて、最適な工法をご検討ください。
| 工法 | 期待耐用年数 | 施工費用 | こんな工場におすすめ |
|---|---|---|---|
| 葺き替え工法 | 約15年~ | 12,000~20,000円/㎡ | ・築10年以上経過し、保全工事とセットで行いたい ・根本的に屋根を修繕し、長期使用したい |
| 発泡ウレタン工法 | 約15年~ | 10,000円/㎡~ | ・築10年以上経過し、保全工事とセットで行いたい ・荷重をかけず耐久性を向上させたい ・遮熱・断熱効果も付与したい ・アスベストの飛散を防止したい |
| カバー工法 | 約15年 | 10,000円/㎡~ | ・築10年以上経過し、保全工事とセットで行いたい ・屋根の耐久性を向上させたい |
| 塗装工法 | 約13~15年以上 | 2,000~5,000円/㎡ | ・築10年以上経過し、保全工事とセットで行いたい ・荷重をかけずに雨漏り対策したい ・暑さ対策も同時にしたい ・アスベストの飛散を防止したい |
※施工面積1,000㎡を想定
※建物の形状、既存屋根の劣化状態などにより価格は変動します。
※塗装工法の施工費用はアステックペイント塗料使用の場合
各工法の詳細については、以下の資料もあわせてご覧ください。
アスベスト含有スレートの改修における注意点

1990年代から2004年までに製造されたスレート屋根には、アスベストが含まれている可能性があります。 通常の使用状態ではアスベストが飛散することはなく、安全に使用できます。
しかし、修繕や改修工事を行う際には、アスベストが飛散するリスクがあるため、十分な注意が必要です。 専門知識を持つ業者に依頼し、適切な処理を行うことが重要です。 施工業者の選定にあたっては、アスベスト対応の実績や資格の有無を事前に確認することをおすすめします。
工場屋根の改修を進めるには
各工法の特徴・費用・適した工場のタイプをご紹介してきました。 自社に最適なメンテナンスを実現するには、信頼できる施工業者としっかりと話し合うことが不可欠です。 施工業者によって、価格だけでなく、対応できる工事の種類や施工の丁寧さなど、品質に差が出ることもあります。
アステックペイントは、全国3,500社の施工店とネットワークを持つ塗料メーカーです。 お客様からのヒアリング内容に応じて、工場専門の認定塗装店120社から厳選した施工会社をご紹介しています。 忙しい業務の合間を縫って改修工事を進めなければならないご担当者様のご負担が少しでも軽減できるよう、専門スタッフが全力でサポートいたします。
工場の屋根にご不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。