施設の老朽化が進んでいるのに、どこから手をつければよいかわからない。そう悩む施設管理担当者様や経営者様は少なくありません。
放置すれば外壁剥落や雨漏りといった安全上のリスクが高まるだけでなく、修繕コストが膨らむ一方です。
この記事では、老朽化の主なリスクから劣化サインの見つけ方、調査・計画・業者選びの具体的な進め方まで、施設管理担当者が知っておくべき情報を解説します。
目次
施設の老朽化とは?放置することで生じるリスク
施設の老朽化とは、建物の構造体・仕上げ材・設備が経年により性能を失い、本来の機能を維持できなくなった状態を指します。問題は劣化そのものではなく、放置することで連鎖的に拡大するリスクです。
特に学校、病院、老健施設(老人ホーム)、宿泊施設などは、利用者数が多く、建物の不具合が安全問題にまで直結します。
外壁剥落・雨漏りによる安全上のリスク
外壁のコンクリート、モルタル、タイルなどの剥落は、通行人や施設利用者への直撃事故につながります。国土交通省のガイドラインでは、外壁の定期的な点検と補修を建物所有者の義務として位置づけており、事故が起きた場合は所有者の法的責任が問われます※。
雨漏りも同様に深刻です。雨水が構造体内部へ浸透すると、鉄筋のさびや木材の腐朽が進行し、建物の強度が低下します。さらに、漏電や電気設備の故障を引き起こすリスクもあり、火災や感電といった二次事故へと発展する可能性があります。
屋根や外壁の劣化は目に見えにくいため、発見が遅れがちです。しかし、早期に対処すれば補修で済む箇所も、放置すれば全面改修が必要になります。
※出典元:建築:建築基準法に基づく定期報告制度について – 国土交通省
利用者の安全面リスク(床の段差・つまずきなど)
内装・共用部の劣化は、外観上の問題にとどまりません。床材の浮きや割れ、段差の発生は転倒事故の直接原因となり、高齢者や子どもが多く利用する施設では特に注意が必要です。
厚生労働省の統計では、転倒・転落が施設内事故の主要原因の一つとして挙げられており、施設管理者として予防的な環境整備が求められます。廊下の床タイル剥がれ、階段の手すりの腐食、駐車場の舗装ひびなども、軽視できない劣化サインです。
こうした内装・付帯設備の不具合は、設備補修だけでなく建物全体の点検を起点に把握することが重要です。
資産価値の低下と修繕コストの増大
建物の劣化を放置すると、不動産としての資産価値が下落します。外観の悪化は施設イメージにも直結し、利用者への印象・採用募集にも影響します。
一般的に、適切な時期に修繕を行った場合と比較して、放置した場合の修繕費は2〜3倍以上に膨らむとされています。小さなひび割れの段階で補修すれば数十万円で済む工事が、構造体まで損傷が及べば数百万円規模の改修工事が必要になるためです。
計画的なメンテナンスは「コスト」ではなく、建物の資産価値を守る「投資」として捉えることが長期的には有利に働きます。
老朽化のサインを見逃さないためのチェックリスト

老朽化の初期症状は、目視でも確認できるものが多くあります。早期発見・早期対処が修繕コストを最小化する最大の鍵です。以下のサインに気づいたら、専門業者への相談を検討してください。
外壁に現れる劣化サイン
外壁の劣化は、いくつかのサインとして現れます。主なものは次のとおりです。
▼ひび割れ(クラック)

▼コンクリートの爆裂(錆びた鉄筋がコンクリートを押し出している)

▼チョーキング現象(手に白い粉がつく)

▼シーリング破断・肉やせ

▼塗膜の膨れ・剥がれ

▼コケ・藻・カビの発生

上記のような症状が見られたら、劣化が進行しているサインです。
ひび割れは幅0.3mm以上になると「要補修」とされ、雨水の浸入経路となります。チョーキング現象とは外壁を手で触ったときに白い粉が付着する状態で、塗膜の防水性が失われているサインです。シーリング(コーキング)が硬化・破断している場合、そこから雨水が侵入して壁内部の腐食が進むため、優先的に補修が必要です。
コケや藻の繁殖は、外壁表面に水分が滞留していることを示します。放置すると塗膜を傷め、外壁素材そのものの劣化を加速させます。カビ・藻対策塗装を検討する際の判断材料としても活用してください。
屋根・内装に現れる劣化サイン(防水劣化・雨漏り・共用廊下の傷みなど)
屋根の劣化は外壁よりも目視確認が難しいため、見落としやすい箇所です。次の症状が確認できたら早めに専門家へ相談することを推奨します。
▼屋根材のひび・欠け・ずれ

▼雨漏りの痕跡(天井のシミ)

▼共用廊下・階段の床材浮き

▼雨樋の詰まり・錆

屋根は紫外線・風雨を直接受け続けるため、外壁よりも早く劣化が進む傾向があります。特にスレート屋根は表面塗装が劣化すると防水性が失われ、雨漏りのリスクが上昇します。
天井にシミや変色が見られる場合、すでに内部への浸水が始まっている可能性が高く、速やかな調査が必要です。共用廊下や外部階段の床材も、雨水にさらされる環境では劣化が早く、定期的な目視チェックが欠かせません。
施設の老朽化対策の進め方|調査から施工完了までの流れ
ステップ①候補施工店の選定と調査依頼
まず、修繕を依頼する可能性のある施工店を2〜3社ピックアップし、現地調査(劣化診断)を依頼します。調査診断のみを行う独立業者に依頼する方法もありますが、実際に工事を任せる可能性のある施工店に直接依頼する方が、二重の調査を避けられ効率的です。
ここで見極めたいのが、調査結果を報告書として提出してくれるかどうかです。すべての業者が写真・数値付きの診断報告書を用意しているわけではなく、口頭説明のみで済ませる業者もあります。報告書を標準で提出する業者は、劣化状況を客観的に可視化する体制が整っている分、信頼性の判断材料になります。
- 調査を複数社(2〜3社)に依頼し、劣化評価や見積りを比較する
- 写真・数値付きの診断報告書を提出できるか確認する
- 調査のみの依頼を渋る、あるいは不安を過度に煽る業者は候補から外す
国民生活センターも「点検商法」トラブルとして注意喚起しています※
※出典元:屋根工事の点検商法のトラブルが増えています – 国民生活センター
ステップ②現状調査(劣化診断)の実施
依頼した施工店による現地調査を実施します。目視調査に加え、打音検査・赤外線サーモグラフィ・ドローン撮影などを組み合わせることで、外観からは見えない劣化も検出できます。
報告書を提出する業者であれば、劣化箇所の写真・位置図・劣化度合いの評価がまとめられます。この報告書が、次の修繕計画と業者選定の判断材料になります。
ステップ③修繕計画の立案と優先順位の整理
診断報告書をもとに、修繕箇所の優先順位を整理します。「安全上のリスクがある箇所」を最優先とし、次いで「放置すれば損傷が拡大する箇所」「美観・機能の維持に関わる箇所」の順で対処することが基本的な考え方です。
一度にすべてを修繕するのではなく、予算と緊急度に応じて短期・中期・長期の計画に分けることで、資金繰りへの影響を抑えられます。計画書には工事内容・時期・概算費用を明記し、社内の承認プロセスにも活用できる形式にまとめることを推奨します。
ステップ④施工業者の選定と契約
ステップ①〜②で得た各社の調査結果・見積りを比較し、価格だけでなく工事範囲・使用材料・保証内容・施工実績を総合的に評価して契約先を決定します。
契約前には、工事仕様書・工程表・アフターフォローの条件を必ず確認してください。口頭での約束は後のトラブルにつながるため、すべて書面に残すことが原則です。
ステップ⑤施工と完工後の確認
施工中は定期的に現場確認を行い、仕様どおりに工事が進んでいるかをチェックします。工事完了後は竣工写真と完工検査報告書を受け取り、修繕計画書の内容と照合してください。
完工後の保証期間と連絡先を明確にしておくことで、施工後に不具合が発生した際の対応がスムーズになります。次回点検の目安時期を業者と合意しておくことも、長期的な維持管理につながります。
老朽化対策を依頼する業者選びのポイント

業者選びの失敗は、工事後のトラブルや追加費用につながります。優良業者を見極める3つの確認ポイントを押さえておくことで、安心して任せられる施工店を選べます。
劣化状況を数値・写真で可視化した診断報告書を提出できるか
信頼できる業者は、口頭説明だけでなく写真付きの診断報告書を提出します。劣化箇所の位置図・ひび割れ幅の計測値・劣化グレードの評価が盛り込まれた報告書は、工事の必要性を社内で説明する際にも有効です。
「報告書の提出があるか・有料か・無料か」「どのような検査方法を用いるか」を事前に確認してください。無料で詳細な診断報告書を提出する業者は、技術力と顧客対応の両面で信頼性が高い傾向があります。
信頼できる業者は、口頭説明だけでなく写真付きの診断報告書を提出します。劣化箇所の位置図・ひび割れ幅の計測値・劣化グレードの評価が盛り込まれた報告書は、工事の必要性を社内で説明する際にも有効です。
「報告書の提出が有料か無料か」「どのような検査方法を用いるか」を事前に確認してください。無料で詳細な診断報告書を提出する業者は、技術力と顧客対応の両面で信頼性が高い傾向があります。
【注意!】RC造(鉄筋コンクリート造)では診断報告書が特に重要
RC造(鉄筋コンクリート造)の施設では、診断報告書の提出があることが特に重要です。コンクリートの中性化による鉄筋腐食は目視だけでは判断できず、数値データによる裏付けが欠かせないためです。
また、RC造は学校・病院・老人ホームなど大規模施設の主要な構造として採用されることが多く、こうした施設は用途・規模の面で建築基準法12条の定期報告制度の対象となりやすい傾向があります。
外壁がタイル・モルタル仕上げの場合は、全面打診等調査の実施が義務付けられているケースもあります※(対象要件は建物の用途・規模・仕上げ材、および所管の特定行政庁によって異なります)。工事費用も高額になりやすいため、社内稟議や行政への説明資料としてそのまま活用できる報告書は、担当者にとって重要な判断材料となります。
※出典元:建築:建築基準法に基づく定期報告制度について – 国土交通省
塗装・防水・シーリングなど複数工種に対応できるか
施設の老朽化対策は、外壁塗装単体で完結することはほとんどありません。防水補修・シーリング打ち替え・下地補修・屋根塗装など、複数の工種が絡むことが一般的です。
複数工種に対応できる業者であれば、工事の整合性が取れ、責任の所在も明確になります。一方、専門外の工事を下請けに丸投げする業者では、品質管理が不十分になるリスクがあります。対応工種と自社施工の範囲を事前に確認することが重要です。
担当者からの丁寧な説明と施設利用者への配慮があるか
大型施設の改修工事は、工事期間中も施設を利用しながら進めるケースが大半です。騒音・粉じん・臭気への対策、作業時間帯の調整、利用者への事前案内など、施設運営への影響を最小化する配慮が業者に求められます。
担当者が工事内容を平易な言葉で説明できるか、施設側の要望を丁寧にヒアリングするかも重要な判断基準です。施工実績確認し、同規模・同用途の施設での経験があるかどうかも参考にしてください。
老朽化対策の改修コストを抑える方法

改修工事は決して安くありませんが、活用できる制度や素材の選択によってコストを抑える手段があります。補助金・助成金の活用と高耐候性塗料の選定が、長期的なコスト削減に直結します。
補助金・助成金を活用してコスト負担を軽減する
施設の改修工事には、国や自治体の補助金・助成金を活用できる場合があります。学校・病院・老人ホームなどの建物であれば、外壁・屋根などの断熱改修を対象とする「既存建築物省エネ化推進事業」(国土交通省)が代表的な制度です※。補助率は1/3、補助限度額は5,000万円/件です。
公募は毎年度実施されていますが、時期や回数は年度によって異なります(令和8年度は6月19日〜8月3日の1回のみ実施、すでに公募終了)。年度によっては春に開始する場合もあるため、最新の公募スケジュールは事業公式サイトで確認することが重要です。
このほか、自治体独自の建物改修補助制度が用意されている場合もあります。制度の有無や対象条件は自治体ごとに異なるため、産業振興課や建築指導課への問い合わせが最も確実です。
補助金は公募期間が限られており、申請には事前の計画書提出が必要なケースが多いため、工事計画と並行して早めに確認することが重要です。
※出典元:既存建築物省エネ化推進事業(国土交通省)
塗装工事は高耐候性塗料を選んで塗り替えサイクルを延ばす
塗装工事における屋根用・外壁用塗料の選択は、初期費用だけで判断すると長期的には割高になります。耐用年数が長い高耐候性塗料を選ぶことで、塗り替えの頻度を減らし、ライフサイクルコスト全体を削減できます。
例えば、アステックペイントの超低汚染リファイン500MF-IRは耐用年数20〜24年を誇り、親水性セルフクリーニング機能によって汚れが雨水で洗い流されるため、遮熱効果の長期持続が期待できます。一般的なシリコン塗料(耐用年数8〜12年程度)と比較すると、30年間で必要な塗り替え回数を大幅に削減できます。
外壁向けには無機REVO1000-IRのような有機無機ハイブリッド樹脂塗料も選択肢です。低汚染性・遮熱性・防カビ防藻性を兼ね備え、耐用年数20〜22年と長期にわたって建物を保護します。初期投資はやや高くなりますが、塗り替えコストと足場費用を含めたトータルコストで比較すると、経済合理性は高くなります。
※出典元:建築物のライフサイクルコスト(国土交通省大臣官房官庁営繕部・2021年)
施設の老朽化対策に関するよくある質問

老朽化対策はいつから始めるべきですか?
建物の竣工から10年を目安に、最初の本格的な点検・診断を実施することを推奨します。外壁塗装の標準的な耐用年数はシリコン系で10〜15年程度であり、10年前後で初期劣化のサインが現れはじめるためです。
「劣化が目に見えてからでは遅い」という認識が重要です。外観上の問題が顕在化した段階では、すでに内部構造への影響が始まっていることが多く、補修費用が大幅に増加します。定期的な目視点検を年1〜2回行い、専門家による診断を5年ごとに実施する体制が理想的です。
なお、建築基準法では一定規模以上の建築物に対して定期報告制度が設けられており、指定された建物は専門家による定期調査・報告が義務づけられています。
調査だけ依頼することはできますか?
調査のみの依頼は可能です。信頼性の高い業者であれば、調査・診断と施工を分けて対応しています。むしろ、調査と施工を同じ業者に一括で依頼することを最初から前提とせず、まずは診断報告書を取得して内容を精査することを推奨します。
診断報告書を複数業者に提示して見積もりを比較することで、工事費用の妥当性を判断しやすくなります。調査費用が無料の業者もありますが、その場合は「施工を受注する前提での無料調査」であることが多いため、条件を事前に確認してください。
アステックペイントの施設修繕・改修工事サービス

アステックペイントは、遮熱塗料シェアNo.1※の塗料メーカーとして、塗料メーカーならではの技術知見をもとに建物ごとに最適な提携施工店と塗料プランをご紹介しています。
※ペイント&コーティングジャーナル第3555号「屋根用・遮熱塗料特集」より
メーカー認定施工店による施工体制と対応エリア
実際の施工は、当社アステックペイントもしくは、全国の工場・倉庫・施設の施工実績が豊富なメーカー認定の提携優良施工店が担当します。アステックペイントは塗料メーカーとして、施工品質の担保につながる技術研修や施工基準の整備を行っており、認定施工店はその基準を満たした施工店です。
対応エリアは全国に広がっており、地方の大型施設でも対応可能な施工店をご紹介できます。私立学校・民間施設の修繕工事や、工場・倉庫の改修工事など、施設の用途に応じた対応実績も豊富です。
現地調査の進め方と診断報告書の提出
お問い合わせ後、提携施工店による現地調査を実施します。外壁・屋根・防水・シーリングなどの劣化箇所を目視および打音検査で確認し、写真と数値データで劣化状況を記録します。
調査結果は写真・位置図・劣化評価を含む診断報告書にまとめてご提出します。報告書は社内の修繕計画立案や稟議書作成にも活用できる形式です。
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まとめ
施設の老朽化対策は、感覚や後回しで進めると安全上のリスクと修繕コストの両方が拡大します。まずは建物の現状を正確に把握する調査から始め、優先順位を明確にした修繕計画を立てることが成功につながります。
アステックペイントは、全国の施工実績が豊富な提携優良施工店と連携し、建物ごとに最適な塗料選定と工事をご提案しています。施設の老朽化についてお悩みの方は、小さなご相談でもお気軽にお問い合わせください。
▼施設の修繕・改修工事サービスについて詳しくはこちら
