連日、35℃を超える猛暑日が続いてます。
工場や倉庫など、気温や湿度の影響を受けやすい職場では、熱中症対策が特に重要です。

熱中症は体調不良だけでなく労働災害を引き起こす原因となり、場合によっては重大な事故や死亡に至ることも珍しくありません

本記事では、工場・倉庫の監督者・管理者の方、従業員の方に向けて、熱中症の現状やリスク、そして効果的な予防法や対策をご紹介します。

具体的な内容は目次よりご確認ください。

※本記事では、グラフや数値データに各省庁のホームページで公開されているものを利用規約に則って使用しています。
情報の出典元のリンクを記載しておりますので、詳細な情報が必要な場合はリンク先ページをご参照ください。

2024年7月の熱中症患者数速報値(総務省消防庁)

総務省消防庁ホームページにおいて、毎週、熱中症による救急搬送状況の速報値が発表されています。

緊急搬送人数の推移を見ると、7月初週には前週から一気に4倍に増加し9,078人、7/22週以降では2週連続で1.2万人を超えています。

また、
7/29~8/4には21名
8/5~8/11には16名
8/12~8/18では5名
熱中症で亡くなっています。

※4/29~5/26までが確定値、5/27以降が速報値。速報値は後日修正されることがあります。
※出典:熱中症による救急搬送人員(厚生労働省)

また、7/29~8/4期間の発生場所別総搬送人員を見ると全体の11%にあたる953人が仕事場①(道路工事現場・工場・作業所等)での発生となっています。

※出典:全国の熱中症による救急搬送状況(厚生労働省)

工場・倉庫における熱中症のリスクとその原因

工場・倉庫における熱中症の現状

厚生労働省の発表によると、昨年2023年における職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上の業務上疾病者の数)は1,106人に上り、全体の約4割が、建設業と製造業で発生しています。

また、2019年~2023年の職場における熱中症による死傷者数の状況を見ても、建設業とほぼ同率で製造業がワースト2位、次いで運送業での割合が高くなっています。

※出典:令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)(厚生労働省)

いかに工場や倉庫の環境が熱中症を引き起こしやすく、対策が不可欠であるかが分かります。


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工場・倉庫環境が熱中症リスクを高める要因

熱中症は、体内の水分と塩分が失われることで体温調整が困難になる状態です。

高温の環境では、体内の熱が放散しにくくなり体温が上昇しやすくなります。
一方、高い湿度では汗が蒸発しにくくなることで、体温調整が困難となります。

やがて体内に熱が溜まり体温が上昇すると脳を含む各臓器が機能しにくくなり、痙攣を起こしたり、意識を失ったり、腎臓や肝臓の機能低下を起こしたりして、最悪の場合死に至ります

高温になった工場内

工場・倉庫では、この「高温」「高い湿度」の条件が揃いやすく、熱中症リスクが特に高くなります。

■工場・倉庫が高温となりやすい理由

①一般的な建築より、屋根や外壁の構造が簡易であることが多く、太陽光により温度上昇を起こした屋根・外壁の熱がそのまま屋内に侵入する

②空間が広いため、空調を導入しても行きわたりにくい

③製造機械が運転により熱を発する

■工場・倉庫の湿度が上がりやすい理由

①建物の空間に対して、窓や出入口などの開口部は小さく、少ない傾向にあるため、空気が入れ替わりにくく湿気がこもりやすい

②製造過程で水を使用したり蒸気を発生したりする場合は、特に湿度の上昇が著しくなる

他にも、適切な休憩時間が確保できない労働状況や、従業員の健康管理が不十分な場合も考えられます。

これらの要因が重なることで、工場内での熱中症発生リスクが急激に高まります。

製造業における熱中症の死亡災害

2023年厚生労働省発表の資料より、製造業の死亡災害を抜粋して2例紹介します。

事例1 30歳代の繊維製品製造業の従業員の死亡災害

業種年代気温暑さ指数(WBGT)
8月繊維製品製造業30歳代33.8℃30.6℃

被災者は8時から17時まで自動車吸音材製造工場内にて製造業務に従事していた。

被災者は作業中に体調不良を訴えていなかったが、17時過ぎに自転車で帰宅していたところ、事業場より約500メートル先の農道で倒れ、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。

事例2 20歳代のガラス製品製造業の従業員の死亡災害

業種年代気温暑さ指数(WBGT)
8月ガラス製品製造業20歳代29.0℃27.2℃

被災者は8時30分から道路拡幅工事現場で交通誘導業務に従事していた。

適宜休憩をとりながら作業し、11時に休憩場所へ向かったが、11時35分頃休憩所近くで倒れている姿を発見され、緊急搬送されたが、その後搬送先の病院で死亡した。

2023年の職場での熱中症による死亡者数は 31人で、うち男性が30名となっています。

31件のうち、暑さ指数(WBGT※)の把握を確認できなかった事例が25 件、熱中症予防のための労働衛生教育の実施を確認できなかった事例が18 件ありました。

職場環境の熱中症危険度の把握や、労働衛生教育などの予防策は万全であるか、改めて確認することが重要です

※WBGTとは・・・暑さ指数。詳しくは3ー2を参照。
※出典:令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)(厚生労働省)

【厚生労働省】STOP!熱中症クールワークキャンペーンの概要

※出典:STOP!熱中症 クールワークキャンペーンリーフレット(厚生労働省)

職場において熱中症が多数発生し死亡する例もある状況から、厚生労働省では熱中症予防を目的として「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」で啓蒙活動を行っています。

キャンペーンの概要

本キャンペーンは5月~9月まで行われるもので、

厚生労働省が
①労働災害防止団体等と連携
②熱中症予防対策の重点業種をはじめとした関係団体へキャンペーン内容を周知
③取り組みを支援する情報サイトの開設
④協賛団体により、企業へ熱中症予防関連製品や、JISを満たしたWBGT測定器の普及

を行います。

また、各企業においては、次の事項に重点的に取り組むよう啓発しています。

各企業で行うべき重点事項

①準備期間中(4月)

暑さ指数(WBGT)の把握の準備JIS規格に適合した暑さ指数計を準備し、点検
作業計画の策定等暑さ指数に応じた休憩時間の確保、作業中止に関する事項を含めた作業計画を策定
緊急時の対応の事前確認等緊急時の対応を確認し、労働者に周知

②キャンペーン期間中(5月~9月)

STEP1 暑さ指数の把握と評価

暑さ指数(WBGT)の把握と評価JIS規格に適合した暑さ指数計で暑さ指数を随時把握

STEP2 測定した暑さ指数に応じて以下の対策を徹底

作業環境管理暑さ指数(WBGT)の低減対策
休憩場所の整備(体を適度に増やすことができる物品および施設、水分および援軍補給を党委に行える環境整備)など
作業管理暑さ指数(WBGT)に応じて作業時間を短縮暑熱順化への対応、水分および塩分の摂取、必要に応じて通気性の良い衣類への変更など
日常の健康管理当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒が熱中症の発症に影響を与えることを指導し、作業開始前に確認
異常時の措置少しでも本人や周りが異変を感じたら、必ず一旦作業を離れ、病院に搬送する(症状に応じて救急隊を要請)などを措置※全身を濡らして送風することなどにより体温を低減※一人きりにしない

③重点取組期間中(7月)

暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底 
水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底 
作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を実施
体調不良の者に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請

より詳しくは、厚生労働省ホームページの資料を参照ください。
重点事項以外に取り組むべき項目も記載されています。

※出典:STOP!熱中症 クールワークキャンペーン実施要項(厚生労働省)

【厚生労働省が推奨するWGBT値】熱中症リスクを正しく把握

WBGT値は『暑さ指数』とも呼ばれ、気温・湿度・輻射熱(太陽光や機械から出る遠赤外線のように、熱が生まれるものを指します)の3つを取り入れた温度の指標で、より正確に熱中症リスクを評価できます

WGBT値を用いた運動指針

1~40までの数値で表し、数値が28(厳重警戒)以上から一気に熱中症が発生するリスクが上がります。

※出典:熱中症予防のための運動指針(日本スポーツ協会)

■平成17年の主要都市の救急搬送データ

平成17年の主要都市の救急搬送データを見ると、暑さ指数(WBGT)が28を超えると熱中症患者発生率が急激に上昇することが見て取れます。

※出典:暑さ指数(WBGT)について(環境省)

気温が高ければ熱中症リスクが上がることは想像できますが、気温以上に湿度が上がることで熱中症リスクが一気に膨れ上がります。

※出典:「WBGT と気温,湿度との関係」の訂正について(環境省)

例えば、最高気温が同じ32℃であっても、湿度が40%の場合はWBGT値が27で、湿度が55%の場合は30まで上がります。これにより、熱中症搬送数が2倍に増えたというデータも出ています。

気温だけを参考にするのは危険だということです。

このようにWGBT値で評価することにより、熱中症リスクをより正確に可視化できるのです

WGBT値の計測方法

WGBTを計測できる指標計が市販されています。
価格も3,000円~入手可能であるため、工場・倉庫内に常設するのがオススメです。

■製品例:
タニタ 黒球式熱中症指数計 デジタル 熱中アラーム TT-562GD

関連記事:WBGT値の熱中症「危険」基準域日数が8日→0日となった事例


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工場管理者が実践すべき熱中症対策

工場管理者は熱中症発生リスクの把握や従業員への注意喚起が求められます。
また、水分補給の機会を確保し休憩時間を適切に設定することも大切です。

具体的には以下が挙げられます。

効率的な冷却設備の導入

冷却設備は、職場の熱中症対策として欠かせません。

空間の大きい工場・倉庫では大型の空調設備やクーラーが有効です。
空気が行きわたらない場合は、工場扇を合わせて活用すると任意の場所の温度を下げることができます。
ライン作業など、特定の場所のみ冷やせばよい場合はスポットクーラーの活用がおすすめです。

適切な室温は28度前後が一般的です。

建物自体の暑さ対策(遮熱工法による設備改善)

工場・倉庫は屋根からの熱の侵入量が非常に大きいため、建物全体の温度上昇を抑えるのであれば「屋根への施工による暑さ対策」の検討もおすすめです。

工場・倉庫の環境・業務の性質・予算などの条件によって、最適な対策が変わってきますので、どのような場合にどの対策が最適かは下記をご参照ください。

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従業員の健康管理と水分・塩分補給の促進

従業員に定期的に水を飲むことを推奨することで体内の水分をしっかりと保ち、熱中症の予防に繋げましょう。
ただし、過剰に水を摂取すると体内の塩分濃度が低下する危険があります。
塩分補給も大切ですので、適度に塩分を含むスポーツドリンクなどを自由に飲めるように提供することが望ましいです。

また、個々の従業員に対して体調管理の意識を高めさせることも大切です。
熱中症の症状や危険性を伝え、適切な対応ができるよう指導しましょう。

■水分補給におすすめの飲料

スポーツドリンク塩分の補給のため、水よりスポーツドリンクがおすすめ
麦茶・ノンカフェインティースポーツドリンク以外で水分補給する場合は、ノンカフェインのものがオススメ

高温時の労働時間管理と適切な休憩の取り入れ

高温環境での労働は疲労の蓄積が激しいため、労働時間の管理と適切な休憩が不可欠です。

労働時間を適切に調整し、熱中症リスクを低減させる方法の1つは、業務を早朝や夕方に行うことです。
気温が低い時間帯に作業を行うことで、熱中症の発生リスクを低減できます。

また、定期的な休憩を取り入れることが大切です。
休憩中に水分・塩分補給を行い、体調を整えることで、熱中症の予防につながります。

さらに、休憩室を設け、冷房や扇風機がある環境で十分に休憩できるようにすることが重要です。

個々の従業員が実践すべき熱中症予防法

従業員が個人で実施すべき予防法は以下の通りです。

暑熱順化で体を暑さに慣らす

暑さに体が慣れることを暑熱順化と言います。
自主的に暑熱順化を行うことで、体が効率的に暑さに対応できるようになり、熱中症のリスクを減らすことができます。

以下のような方法で、無理のない範囲で汗をかき体を暑さに慣れさせます。
同時にこまめな水分・塩分補給を行うことも忘れないようにしましょう。

暑熱順化に必要な期間は2週間程度です。
一度暑熱順化しても数日暑さから遠ざかるとその効果は薄れてしまいます
そのため、継続して取組むことが重要です。

方法内容頻度の目安
適度な運動早足ウォーキングや軽いジョギングを30分程度行います。週に5回
サイクリング軽く汗をかく強度でサイクリングを30分程度行います。週に3回
入浴40℃程度のお湯に10~15分ほど浸かることで、発汗を促進し暑さに慣れる。週に3回
エクササイズ家の中で軽いストレッチやエクササイズを少し汗をかくまで行うことで体を動かします。週に5回以上

熱中症予防のための適切な服装と小物を選ぶ

熱や湿度から身を守り体温調節を円滑にすることで、熱中症のリスクを軽減することができます。

ファン付き作業着
小型ファンを取り付けた作業着。
ファンを稼働させると、外気を服の中に取り入れ送風することで汗を蒸発させ、その気化熱で体表を冷やします。
アイスベスト保冷剤を入れられるポケットの付いたベスト。
保冷剤を入れる位置は両脇や背中などで、静脈血を効果的に冷やすことができるため、体表・体内両方から効果的に体を冷やすことができます。
クールインナー
(夏用コンプレッションインナー)
接触冷感や吸汗速乾機能を持つインナー。汗を気化することで体温や湿度を調節する機能があり、汗のべたつきや蒸れによる不快感が軽減できます。

関連記事:工場・倉庫の暑さ・熱中症対策|個人でできるものから設備導入まで

効果的な水分補給法

効果的な水分補給と食事の工夫も、熱中症予防に欠かせません。
のどが渇く前にこまめに水分補給をすることが大切です。
作業時の運動量にもよりますが、のどが渇いていなくても30分に一度は水分補給します。

また特に気温が高い時期や、激しい運動を伴う作業の時は15分に一度程度の水分補給を行いましょう。

また、アルコールには強力な利尿作用があるため、水分補給には向きません

■水分補給におすすめの飲料

スポーツドリンク塩分の補給のため、水よりスポーツドリンクがおすすめ
麦茶・ノンカフェインティースポーツドリンク以外で水分補給する場合は、ノンカフェインのものがオススメ※理由を添える

体調管理と熱中症症状の早期発見

1日3食の食事と、適切な睡眠をとります。

熱中症の早期発見には、自分自身の体調変化を把握し、周囲の人にも気を配ることが大切です。
熱中症の兆候に気づいた場合はすぐに休憩を取り、状況を上司や安全責任者に報告して適切な対応を受けましょう。

最後に

・工場・倉庫における熱中症の現状とリスクの高さを把握し、十分な予防に努める
・厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の取り組み項目を実施する
・WBGT値を取り入れて、リスクを正しく把握する
・工場管理者側では、設備導入・改善による対策実施、従業員の健康管理・業務管理を行う
・個々の従業員では、十分な暑熱順化、服装選び、健康管理を行う

以上を実践して、十分な熱中症対策を行いましょう。

さらなる情報や具体的な対策方法については、当サイトの関連ページも参考にしてください。

【熱中症対策】来年の起案に向けて遮熱テスト施工が有効です

アステックペイントでは、暑さ・熱中症対策として、屋根からの熱の侵入を抑えるのに効果的な各種遮熱塗装をお取り扱いしております。

工場・倉庫の屋根・外壁は面積が大きく、また太陽光の熱を吸収しやすいため、主要な熱の侵入路となります。
そのため遮熱塗装を行い屋根・外壁の温度上昇を抑えることで、熱の侵入量を低減し、屋内温度を低下させます。

また、既存の空調効率がアップするため、消費電力軽減にも期待できます。

各種遮熱塗装については無料でのテスト施工も承っておりますので、ご希望の場合はお気軽にお問合せ下さい。

遮熱塗装の効果を実証したデータ資料は下記よりダウンロードいただけます。


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